■クルーズ船での対応は失敗した

――日本政府は3月9日から、中国と韓国からの入国者に対する入国制限を強化し、2週間の検疫を開始しました。

流行している国からの入国を拒むというのは現段階でも有効だ。ただ、流行していない地域や、流行が終わりつつある地域からの入国も拒むのは有効性としてどうかと思う。現段階では、対象の国や地域に合理的な整合性がとれているのか、それとも政治的な思惑で入国制限が決まっているかが不明確だ。

例えば、感染者数の拡大が著しいイタリアを対象から外した判断は合理的なのか。一方で、検疫を全土に広げた中国での新規感染者は実は非常に減っている。武漢では依然として拡大が続いているが、北京や上海と比べれば日本のほうが感染者の増え方は多い。

中国と韓国からの入国者数にもよるが、2週間の検疫を行う施設があるのか。検疫を行うだけの人的リソースがあるのか、疑問が残る。

――新型コロナウイルス対策が本格化した2月初めの段階から、「政府の対策はおおむねうまくいっている」と評価されていました。

(政府の対策に対する評価は)今も当時と同じで、全体で言うならば日本の対応はおおむねうまくいっていると思う。細かいところで指摘できる点はいくつかあるが……。

――「細かいところ」とは、集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」でのことですか?

クルーズ船での対応は失敗したと思っている。

――岩田教授は2月18日、クルーズ船内部の状況についての動画をYouTubeで公開しました。ウイルスのない「グリーン・ゾーン」とウイルスが存在して感染の危険がある「レッド・ゾーン」が「ぐちゃぐちゃになっていた」と。改めて、課題は何だったのでしょうか。

クルーズ船というのは閉鎖的な空間にたくさんの人がいて、おまけに高齢者が多い。非常に感染しやすく、リスクも高い。感染症対策上は下船させることが正しくても、実際には周辺の医療機関にそれだけの受け入れキャパシティーがなければ、ただ下船させるというわけにはいかない。そこが最初のジレンマになる。

そのジレンマの中で、感染リスクが高いクルーズ船の中に14日間とどめ置いて検疫をするという判断を日本はした。その判断が間違っていたのかどうかわからないが、そういう選択をしたのであれば、船の中の感染対策は完璧にする必要があった。

しかし、感染症の専門家がしっかり入ってオペレーション(運営)をするのではなく、感染対策のプランは官僚主体でつくったものになっていた。専門家は結局、少し入っただけだった。日本環境感染学会の専門家も入ったが、結局はすぐ撤退してしまった。

入れ替わり立ち替わり専門家が入っているが、専門家がリーダーシップをとった対策づくりができていなかった。

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