2019/8/30 21:40神戸新聞NEXT

 神戸・ポートアイランドのスーパーコンピューター「京」の電源が30日、落とされた。一時は計算速度世界一を誇った“日の丸スパコン”は、2012年の本格稼働から7年間に延べ約1万人が利用し、さまざまな分野で成果を上げた。9月に解体が始まり、京の最大100倍の性能を目指す後継機「富岳」(21年稼働予定)が同じ場所に設置される。(霍見真一郎)

 京は、全国のライバル都市を抑えて神戸への誘致に成功。09年に旧民主党による事業仕分けで計画が凍結しかかったり、東日本大震災で部品工場が被災したりしたが、厳しい局面を乗り越えて11年にシステムの一部稼働にこぎ着けた。

 同年11月には世界で初めて毎秒1京回(京は兆の1万倍)の計算速度を達成し、世界ランキング1位を2期連続で獲得。現在は世界20位、国内3位だが、ビッグデータの処理能力を示す別の世界ランキングでは、15年から今年6月まで9期連続で1位となるなど、スパコン界では長く突出した存在感を放っていた。

 京の利用者支援をしている高度情報科学技術研究機構神戸センターによると、運用を終了した今月16日までに、延べ1万1095人が利用。大学などの研究者だけでなく、企業関係者も2869人(25・9%)含まれる。京を使った研究の論文も1240本発表され、医療や防災、ものづくりなど多様な分野で世界水準の研究成果が生まれた。

 この日、京がある理化学研究所計算科学研究センターで開かれた式典には、開発担当者や理研の研究者ら約180人が参加した。代表者4人が順に電源を切るスイッチをひねり、最後は理研の松本紘理事長。照明が段階的に消える演出もあり、京の動く音が止まると参加者から拍手が起きた。松岡聡センター長は「京とはお別れだが、さまざまな科学的成果は永遠に残る。京、ありがとうございました」とあいさつした。

 理研によると、後継機「富岳」の完成までは、全国のほかのスパコンネットワークで機能を代替する。

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201908/0012655449.shtml