「太陽に津波のおそれ?」活動周期の終わりに現れるターミネーターの謎
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2019/8/3 06時00分
Hazard lab

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(画像)太陽の黒点数は約11年周期で増減する。左は黒点がない現在(2019年6月)の太陽、右は極大期(2014年4月)の太陽(NASA SDO)
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 約11年の活動周期をまもなく終える太陽について、米大気研究センター(NCAR)は今月24日、「 “太陽津波”が起こると、数週間後に太陽が新しい活動局面に突入する可能性がある」という研究成果を発表した。

・サイクル25はいつ?

(画像)現在の太陽活動周期は「第24周期(サイクル24)」(NASA)
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 太陽は、黒点の増減やフレア(爆発)を繰り返しながら、平均して約11年(9〜14年の幅がある)の周期で活動しているのは、ドイツの天文学者、ハインリッヒ・シュワーベが約200年前に発見。

 現在の太陽周期は「第24周期(サイクル24)」と呼ばれており、2009年の暮れごろに始まったと考えられており、まもなく活動極小期を迎える見通しだ。

 極小期や極大期は、黒点数が増えて、太陽から発せられる放射エネルギーの強弱がピークを迎える時期を指すが、その時期を正確に予測するのは難しく、世界各国の研究機関が日夜、推移を監視している。

・過去140年分の太陽コロナの動きを分析

(画像)太陽の大気の構造と温度。太陽は表面よりも大気の外側のほうが温度が高い。その熱源はどこにあるのか?日本の太陽観測衛星ひのでも観測中だ(©ISAS/JAXA)
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こうしたなか、米大気研究センターの天文学者、スコット・マッキントッシュ氏らのチームは、太陽を取り囲む最も外側にある高温のガス層「コロナ」の動きに着目。

 太陽コロナでは、黒点周辺の明るい領域だけでなく、小さな輝点も数多く見られるが、11年周期とは同期せず、黒点数が多い活動期には輝点数が少なく、黒点数が少なくなると、輝点が多くなることがこれまでの観測で明らかになっている。

 研究チームが過去140年分の観測データを分析した結果、輝点は黒点よりも高緯度の55度付近に出現することが多く、それが1年に3緯度分ずつ太陽の赤道に向かって移動。緯度35度付近に到達すると、黒点の活動と重なるようになり、最終的に赤道にたどりついたときに輝点が消失。

・ターミネーター「終わらせるもの」

 研究者は輝点の消失を「ターミネーター(終わらせるもの)」と命名し、ターミネーターから数週間後に、再び中緯度で黒点が出現することを発見した。この動きをあらわしたシミュレーション動画を見ると、まるで太陽の大気中で津波が繰り返し起こっているように見える。

■■動画ありツイート略

(画像)2012年4月〜2013年4月にNASAのソーラーダイナミクス天文台がとらえた25点の太陽の画像を合成したもの。黒点が中緯度から赤道付近にしか出現しないことがよくわかる(NASA)
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 この太陽津波とターミネーターが起こる理由について、研究チームは、太陽の北極と南極をドーナツ状に取り囲む二つの磁場が関係している可能性があると指摘。磁場が太陽の表面を移動して赤道付近で衝突すると、プラスとマイナスの電荷が互いに打ち消し合い、磁場にとじこめられていたプラズマを放出。この動きによって、新たな黒点が出現するという。

 現在の太陽活動は、今年後半から来年初めに極小期を迎えると考えられているが、研究チームは「サイクル25の始まりに伴って、太陽津波とターミネーターを観測する可能性があると信じている」と期待を寄せている。

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