日本の科学研究の状況がこの3年間で悪化したと考える研究者が多いことが、文部科学省科学技術・学術政策研究所が12日発表した調査結果で明らかになった。政府は科学技術を経済成長の原動力としてとらえ、予算の「選択と集中」などの施策を進めているが、近年、中国などの台頭で論文のシェアなどが低下している。研究現場の実感も、日本の衰退を裏付けた形だ。

 第5期科学技術基本計画が始まった2016年度から毎年、大学や公的機関、産業界などの研究者約2800人に、63問からなるアンケートを実施し、回答の変遷を調べている。

 この3年間で評価を上げた回答者と下げた回答者の差を取ると、「国際的に突出した成果が出ているか」(マイナス29ポイント)▽「基礎研究の多様性が確保されているか」(同22ポイント)▽「成果がイノベーションに十分つながっているか」(同20ポイント)など、基礎研究に関連する項目で大きく評価を下げていた。

 「女性研究者が活躍するための人事システムの工夫」(2ポイント)など一部で評価を上げた項目もあったが、評価が全体で下がる傾向がうかがえた。

 自由記述では「日本の基礎研究は全ての分野・レベルにおいて急速に衰退しつつある」「国際会議等における日本の研究者のプレゼンス(存在感)がより低下している」などの声が寄せられた。また「特定の分野や大学に研究資金が偏っている」など「選択と集中」を批判する意見もあった。

 同研究所の伊神正貫室長は「切実な声も多くあり、早急な対応が求められる」と話す。

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毎日新聞
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