−赤外光エネルギーの利用に期待−

 坂本雅典 化学研究所准教授、寺西利治 同教授、廉孜超 化学研究所・日本学術振興会特別研究員(PD)らの研究グループは、豊田工業大学、関西学院大学、立命館大学、国立研究開発法人物質・材料研究機構と共同で、赤外域に局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を示すCu7S4(硫化銅)ナノ粒子と硫化カドミウムナノ粒子を連結させたヘテロ構造ナノ粒子を合成し、その水素生成光触媒活性を評価しました。

 本研究の結果、白金を担持した硫化銅/硫化カドミウムヘテロ構造ナノ粒子が、波長1100 ナノメートルでの外部量子効率3.8%という世界最高の効率で赤外光から水素を生成できる光触媒であることを発見しました。また、この赤外応答光触媒を利用することで、地表に到達する太陽光の最大波長である2500ナノメートルの光を用いて水素を生成することにも成功しました。この事実は、新たに開発された赤外応答光触媒が、全太陽エネルギーのおよそ半分を占める赤外域の太陽光のほぼすべてを高い効率でエネルギーに変換できることを示しています。

 さらに、新たに開発した光触媒の電荷分離寿命は、一般的なプラズモン誘起電荷分離よりもはるかに長い273 マイクロ秒で、長寿命の電荷分離が優れた触媒活性の原因であることが示されました。本研究により開発された技術は、赤外光から高効率で水素を発生することのできる光触媒として、革新的な光―エネルギー変換材料への応用が期待されます。

 本研究成果は、2018年12月18日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究で合成した硫化銅/硫化カドミウムヘテロ構造ナノ粒子のイメージ図と赤外応答光触媒活性
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