■米カリフォルニア州で撮影されたコヨーテ5匹は目が青かった。背景に何がある?

2018年4月、米カリフォルニア州北部のポイントレイズ国定海岸で、写真家で海岸のガイドでもあるダニエル・ディートリック氏は珍しい動物に遭遇した。青い目をもつ雌のコヨーテだ。コヨーテの目は通常は茶で、青い瞳をしたコヨーテは極めて珍しい。青い目は、突然変異によるものと考えられている。

 この希少な形質は広がりつつあるようだ。というのも、ここ数カ月の間に、半径160キロ以内で、同じように青い目をしたコヨーテ4匹が目撃・撮影されているからだ。これらは、ディートリック氏が見つけた個体とは違うとみられている。

 ディートリック氏が青い目をした雌のコヨーテを見つけたのは朝だった。当初は特に不思議に思わなかったという。その雌の外見は、コヨーテの特徴である、ひょろりとした長い脚、カムフラージュに適した銀色がかった茶色の毛皮、草むらに隠れたジリスが立てる音を聞き取るための三角形の耳をしていて、瞳を見るまでは特に変わった個体とは思わなかったからだ。ナショジオは2018年6月に、ディートリック氏が見つけたコヨーテについて独自に調査し、「100万匹に1匹の個体」とナショジオニュースで報じた。

 最初に青い目をしたコヨーテが見つかってからというもの、ポイントレイズから東側のサクラメント付近や、かなり南のサンタクルーズのはずれで、淡い青色の目をもつコヨーテが目撃・撮影された。ポイントレイズ周辺には現在、2匹が生息していることが確認されている。1匹は目をけがしているので、2匹は簡単に見分けられると、写真家のデヴィッド・クレーマー氏は言う。

■青い目の血統は

「青い目のコヨーテを目撃した」という報告は、ごく狭い地域に限られ、米国のほかの地域での目撃情報がないことから、研究者は、数世代前に目の色を決める遺伝子が突然変異し、最近撮影・目撃されたコヨーテは、最初の「100万匹に1匹」の個体につながる子孫だろうと推測している。

 コヨーテは生後1〜2年すると、生まれた土地を離れ新しいなわばりを探す。都市や危険な車道を横切りながら16〜32キロの距離を移動することは珍しくない。サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジを渡ったコヨーテも過去確認されている。今回はポイントレイズから半径160キロの範囲で青い目をもつコヨーテが目撃されている。この160キロという距離も、数世代かければ不思議ではない距離だ。 (参考記事:「コヨーテはなぜNYのバーの屋根に上ったのか」)

 こうした突然変異は、まれにしか起こらない。こうした事例で、よく取り沙汰される可能性に「イエイヌとの交雑」があるが、今回のケースは当てはまらない。

■希少な青い目のコヨーテ。ポイントレイズ国定海岸で暮らす5匹のうちの1匹。科学者らは、青い目の突然変異が広がりを見せていると考えている。
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