原子力規制委員会は、火山の破局的噴火による原子力発電所への影響を評価するため、2021年度から鹿児島湾内の火山「姶良あいらカルデラ」の海底での常時観測に乗り出す。地殻変動や地震などのデータを集めて破局的噴火のプロセスを解明し、原発の安全審査に生かすのが狙いだ。

 破局的噴火は、噴出物の量が100立方キロ・メートル以上の超巨大噴火で、火砕流が数十〜100キロ・メートル以上の範囲に到達する。国内では1万年に1回程度起きているが、縄文時代の7300年前が最後で、科学的な観測データがないため詳細はわかっていない。

 こうした噴火によってできた巨大なくぼ地はカルデラと呼ばれ、大部分は海底や湖底にある。海底でのカルデラの常時観測は国内初。規制委は19年度から予備調査を開始し、研究を委託する機関の選定などを進め、21年度に海底に地震計や水圧計などを設置、観測を始める計画だ。

 破局的噴火の原発への影響を巡っては、広島高裁が17年12月、阿蘇カルデラ(熊本県)の破局的噴火で火砕流が到達する恐れがあるとして、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを命じ、注目された。同高裁は18年9月に決定を取り消したが、この間、伊方3号機は停止した。

 九州電力の川内原発(鹿児島県)や玄海原発(佐賀県)でも、破局的噴火の懸念から運転差し止めを求める仮処分申請が相次いでいる。

読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/science/20190107-OYT1T50012.html