今でこそ、地球上に存在しているヒト科の動物は我々しかいない(はず…ビッグフットなどの未確認生物を除けば)のだが、およそ20万年前まではいくつかのヒト属が競合していた。そして、生存競争に勝ったホモ・サピエンスは繁栄し、負けたホモ・エレクトスは絶滅に追いやられた。

この差はどこからきたのだろうか。学術誌PLOS Oneに発表された最新の研究によれば、それはホモ・エレクトスの怠けグセだったかもしれないそうだ。

およそ2000万年前に地球上に現れ、5万年〜10万年前に姿を消したホモ・エレクトス。ほかのヒト属と比べて努力を惜しみ、しかも保守的で変化に適応できなかったと見るのはオーストラリア国立大学のケリー・シプトン博士だ。

シプトン氏を含む考古学研究チームは、サウジアラビアの遺跡から出土した何千個にも及ぶ石器を分析して、この結論に至ったという。

当時のサウジアラビア半島は豊かな水をたたえる川が何本も走り、大地を潤していた。ホモ・エレクトスはそのような川が作り出した肥沃な土地に住み、水にも、石器の道具となる石にも恵まれた環境に身を置いていた。あとは、立派な石器道具を作って狩りに成功すれば問題なし…のはずだった。

ところが、彼らは簡単に石を手に入れることができたため、石のクオリティーを追求しなかった。そこらに転がっている石なら何でもいいとでも言わんばかりに、石器造りに適していない石も拾ってきて加工していたそうだ。

結果、あまりクオリティーの高くない石器道具に頼って狩りをしていたらしい。

遺跡から遠くない場所には丘陵があり、そこに登りさえすれば頂上付近でハイクオリティーな石をたくさん採取できたはずだった。しかし、ホモ・エレクトスはなぜかそれをしなかった。

対照的に、ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)やホモ・サピエンスは、クオリティーの高い石を求めて遠くまで旅をし、面倒でも遠くから持ち帰っていたそうだ。

このこだわりの差が狩りの技量に影響し、ホモ・エレクトスの生存を不利にした。

最終的にホモ・エレクトスを絶滅に追いやったのはサウジアラビア半島の乾燥化だったそうだ。川が干上がり、何千年にも渡って気候が変動していく間にも、ホモ・エレクトスは生き方を変えようとしなかった。変化に対応しきれなかった彼らは、やがて数を増やしていったホモ・サピエンスとの生存競争に負け、死に絶えたと考えられるそうだ。

まるでイソップ童話のような、なんとも身につまされる話なのである。

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関連リンク

Laziness May Have Driven Homo Erectus to Extinction (Live Science)
Acheulean technology and landscape use at Dawadmi, central Arabia (PLOS One)

https://www.discoverychannel.jp/0000032133/