世界中で約1000万人の人々が、トラコーマなどの目の疾患によって失明してしまいます。
この病気を防ぐためには、角膜移植を行う必要がありますが、移植に利用できる角膜には限りがあり、
全ての人を救うためには角膜が足りないという問題があります。
ニューカッスル大学で遺伝医学の教授を務めるチェ・コノン氏らの研究チームは角膜を作り出すための溶液を開発し、
3Dバイオプリンターを使用することで人工角膜を作り出すことに成功したとのことです。

3D bioprinting of a corneal stroma equivalent. - PubMed - NCBI
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29772228#

First 3D-printed human corneas
https://medicalxpress.com/news/2018-05-3d-printed-human-corneas.html

研究チームは、角膜を人工的に作り出すために、
健康なドナーから抽出した角膜の幹細胞とアルギン酸、コラーゲンを混ぜ合わせることで、
角膜を生成できる溶液「バイオインク」の開発に成功しました。

このバイオインクは、安価な3Dバイオプリンターを使用した場合であっても、
10分以内で角膜を生成できることが報告されており、
短時間かつ低コストで角膜を作り出せるメリットがあるとしています。
また、研究チームは3Dバイオプリンターで生成された人工角膜内の幹細胞が生き続けていることを確認しており、
その後、細胞の培養や増殖にも成功したと報告しています。

コノン氏は「私たちは世界中の多くのチームが、
3Dバイオプリンターで角膜を生成できる理想的なバイオインクの開発を追究してきました。
今回、私たちが開発したアルギン酸とコラーゲンで作り出したゲルは、
3Dプリンターのノズルから絞り出すのに十分な柔らかさがありながらも、
形状を保持できる剛性を持っており、さらに幹細胞を生きた状態に保持することができます」と述べており、
バイオインクの有用性を述べています。

また、バイオインクにより生成される人工角膜は、3Dプリンターによって生成されるため、
患者の眼球に合わせて「大きさ」や「形状」を変化させることが可能です。
事前に患者の眼球をスキャンしておけば、
患者に合わせた角膜を短時間で生成できると研究チームは説明しています。

コノン氏は「私たちが作り出した角膜は、今後も多くの検査を受ける必要があり、
実際に移植できるようになるまでに数年かかると思います。
しかし、私たちの研究は患者の目に合わせた角膜を作り出せることを示しており、
このアプローチが世界的な角膜不足に対抗できる可能性を秘めています」と述べています。

https://i.gzn.jp/img/2018/05/30/3d-printed-human-corneas/00_m.jpg
https://i.gzn.jp/img/2018/05/30/3d-printed-human-corneas/01_m.jpg

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180530-3d-printed-human-corneas/