【3月27日 AFP】
20年前、「バイアグラ」と呼ばれる小さな青い錠剤が、米国に文化的変革をもたらした。
数百万人の高齢男性が再び性行為を行えるようになり、
かつてはタブー視されていた勃起不全に関する話題が日常の会話に上るようになった。

 バイアグラの誕生がきっかけとなった性機能改善という革命は、多くのカップルの性生活を活気づかせたが、
その一方で、老化に伴い機能不全や性欲喪失に悩まされている女性たちはほぼ蚊帳の外だった。

 1998年3月27日に米食品医薬品局(FDA)によって承認された、
米製薬会社ファイザー(Pfizer)の超大型新薬は、全世界でこれまでに約6500万件処方された。

 バイアグラは、男性器の勃起を促す効果のある初めての薬剤だった。

 バイアグラの広告は、それまで「インポテンツ」として認識されていたものを、
治療可能な疾患「ED」として捉え直すことを目的に制作された。
初のテレビCMには、
退役軍人で大統領候補になったこともある共和党上院議員のボブ・ドール(Bob Dole)氏が起用され、
EDに対する自身の不安を視聴者に打ち明けた。この戦略は大当たりした。

 バイアグラの原料となるクエン酸シルデナフィルは、
当初、高血圧やアンギーナ(急性扁桃炎)の治療を目的とする薬剤として開発された。

 しかし1990年までに行われた初期臨床試験では、参加した男性たちの間で、
陰茎への血流増加による勃起改善に最も効果があったことが判明した。

 世界中にその名が知られるようになったバイアグラだが、今でも誤解している人がたまにいるという。

 ある米泌尿器科医師は、「これは催淫薬ではありません」と話し、
「この薬について聞いてくる多くの男性が、『妻が性行為にあまり関心を示してくれなくて』と話します」と続けた。

■「ありがとう、バイアグラ」

 2000年には米コメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ(Saturday Night Live)」で、
性的に満ち足りた男性が「ありがとう、バイアグラ」と言うCMを真似たパロディーが放送された。

 パロディーでは、欲情した様子の男性パートナーに背後から覆いかぶさられた女性が、
「ありがとう、バイアグラ」とうんざりした表情を見せるシーンが、人を替えて次々と映される。

 この寸劇は、女性の視点に触れる人がほとんどいない現実を反映していたことから大うけした。

■「女性用バイアグラ」は苦戦

 FDAは2015年、「女性用バイアグラ」としてメディアで話題となった
「アディ(Addyi、フリバンセリン)」と呼ばれる薬剤を承認した。
この薬剤は、性行為への関心を失った女性たちのための性欲向上剤をうたったものだ。

 この錠剤は、初めから物議を醸していた。

 抗うつ剤の一種であることから、アルコールとともに服用することが禁じられた上、
価格も数百ドル(数万円)と高価で、悪心や嘔吐、自殺願望といった重い副作用のリスクも伴っていた。

 性行為に関して言えば、高齢女性の主な問題は閉経に伴う膣の乾燥で、それが性交痛を引き起こす可能性がある。

 改善法として、ホルモン治療や膣を活性化させるレーザー治療などが行われる傾向にある。
これらの治療法はまだあまり知られていないが、数十万ドルの治療費がかかるとされ、
男性に対する治療法に比べて少なくとも20年は遅れているという。

 バイアグラは発売当初、1錠あたり約15ドル(約1600円)だったが、
その後50ドル(約5300円)を超える価格にまで値上がりした。
昨年ついに後発薬(ジェネリック)が解禁となり、価格は1錠あたり1ドル(約105円)未満に値下がりしている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN

関連ソース画像
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AFP
http://www.afpbb.com/articles/-/3168890