過去に何度も「人口増加によって人類は食糧危機を迎える」という主張が行われてきましたが、
世界規模で出生率が減少傾向に転じていることから、この可能性は2018年現在、
非常に小さくなっているとニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の金融学助教授であるNoah Smith氏が述べています。

The Population Bomb Has Been Defused
https://www.bloomberg.com/amp/view/articles/2018-03-16/decline-in-world-fertility-rates-lowers-risks-of-mass-starvation

「人口の増加しすぎで大規模な食糧危機が訪れる」という可能性は、
1700年代後期にすでにイギリスの経済学者であるトーマス・マルサスが指摘するところでした。
その後、1968年にパウル・エールリヒも「1970年代には人口爆発によって飢餓が訪れるだろう」と予測していましたが、
人口は増加したもののテクノロジーの進歩によって供給が追いついたため、
2018年現在まで世界規模の飢餓は発生していません。

これまではテクノロジーの力で危機を避けてきましたが、必ずしもテクノロジーが勝利するわけではなく、
もちろん技術を持ってしても食糧危機に陥る可能性はあります。
しかし、「出生率の減少」という要素を加えるとその可能性がぐんと低くなる、とSmith氏は別の見方を示します。


マルサスとエールリヒの生きた時代、女性は平均して5人の子どもを出産しており、大家族を構成する傾向にありました。
しかし、エールリヒが本を出した直後から、その傾向が変わり出します。出生率が減少していったのです。
https://i.gzn.jp/img/2018/03/25/population-bomb-defused/001_m.png

一人の女性が15歳から49歳までに産む子どもの数の平均である合計特殊出生率で値が2.1以下になるということは、
「最終的に総合的な人口が安定して減少する」ということを示しています。
多くの国で出生率遷移が起こり、過去に6〜7という値だった出生率は2以下になっており、
標準化した「小さな家族」が再び大家族に戻ることはほとんどありません。

なぜこのような変化が起こったのかについては諸説あり、農地から都会に人が移り住むようになり、
農作業に必要な人手が不要になったこと、
あるいは都会での子育てはお金がかかるため子どもを持つ数が減ったという考え、
また伝統的なジェンダーについての考え方から女性が自由になったことも要因の1つとして考えられています。
しかし、これらの要素に共通していえるのは、「短期的な変化」ではないということです。

インドや中国における出生率の遷移は、特に重要な意味を持ちます。
https://i.gzn.jp/img/2018/03/25/population-bomb-defused/002_m.png

一方で、世界的な人口爆発の懸念は小さくなったものの、地域的に人口爆発が起こる可能性は残されています。
ある地域で大家族が増加し続けていけば、その地域は人口増加の限られた地域を圧倒し、
最終的には再び世界的に出生率が上がることも考えられます。
特に、文化的に多くの子どもを持つ習慣がある国において、
そのような事態が起こるのではないかと懸念されています。

数十年前は、「伝統的にジェンダー役割が強調されるイスラム教圏では人口が減少しないのではないか」と考えられていましたが、
近年は、イラン・サウジアラビア・バングラディッシュ・インドネシアなどで出生率の遷移がすでに完了しており、
エジプトやパキスタンではまさにその最中とのこと。なお、これらのデータは世界銀行のものですが、
世界銀行の合計特殊出生率は高い方でエラーを起こす傾向があり、CIAの調べではパキンスタンの数字は2.62以下だとされています。
https://i.gzn.jp/img/2018/03/25/population-bomb-defused/003_m.png

GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20180325-population-bomb-defused/

続く)