米国の研究機関スペース・サイエンス・インスティテュート(Space Science Institute)や
米国航空宇宙局(NASA)などからなる研究チームは2018年2月24日、NASAとインドの月探査機の観測データから、
月の水が表面全体に広く、なおかつ常に存在している可能性があるという研究結果を発表した。
論文は学術誌「Nature Geoscience」に掲載された。

月の水をめぐっては、その存在や埋蔵量について研究と議論が続いており、
近年では月の極域に多く存在し、また月の一日に応じて水が地表を移動するとも考えられていた。
今回の研究はその通説を覆すもので、月の水の起源や、他の天体の水の存在に新たな理解をもたらすとともに、
将来、月の水を資源として利用できる可能性も出てきた。

■2つの月探査ミッションのデータから導き出された新発見

発表したのは、スペース・サイエンス・インスティテュートの科学者Joshua Bandfield氏らの研究チーム。

これまでの研究では、月の水は北極や南極周辺の極地域に多く存在し、また月の一日(地球の29.5日)に応じて、
水の存在を示す信号の強さが変動するとされていた。これを受けて、水の分子(H2O)は"ホップ"して動き回り、
最終的に極域にあるクレーターの中の、永久影になっている低温領域「コールド・トラップ」に行き着き、
何十億年にもわたって安定して存在し続けるようになると考える研究者もいた。

また水は、人が生きるために必要不可欠で、ロケットの推進剤として利用することもできる。
そのため、月の極域は将来の有人月探査や、月面基地、都市建設の有力候補にもなっていた。

今回、Bandfield氏らの研究チームは、月の水の分布について、かつてないほど正確に調べるため、
NASAの月探査機「ルナ・リコネサンス・オービター」(LRO)と、
インド宇宙研究機関(ISRO)の月探査機「チャンドラヤーン1」(Chandrayaan-1)の、
2機の月探査機のデータを組み合わせた。

月に水があるかどうかは、月面で反射した太陽光の強さを、分光計で測定することで調べられる。
もし水が存在すると、近赤外線の波長域である3μm付近のスペクトルに反応が表れる。
しかし、月面そのものもほぼ同じ波長で光っているため、水の情報のみを得るためには、
水からの反射と月面からの放射とをきっちりと見分ける必要があった。そのためには、正確な温度の情報が必要となる。

チャンドラヤーン1はNASAが提供した可視光・赤外分光計を、そしてLROは月面の温度を正確に測れる観測機器を搭載している。
これらのデータを組み合わせることで、月の水について正確に調べることができたのである。

■月の表面全体に水がつねに存在?

その結果、月の水は、地形や組成にかかわらず広い範囲に存在していることが判明。ま
た、時間経過にかかわらずあまり動かないことも判明し、こうしたことから月の水は、
H2Oよりも反応性が高いヒドロキシ基(OH)として、鉱物などにくっついた状態で多く存在していると考えられるという。

さらに、H2Oがあったとしても、これまで考えられていたように、月面に緩く付着しているわけではなく、
あまり動き回らないことも示唆しているという。

この研究結果についてBandfield氏は「時間帯や緯度に関係なく、月には水がいつも存在しているようです。
また表面の組成に依存することなく全体的に存在し、くわえて表面に張り付いた状態のようでもあります」と語る。

また、研究チームのひとりである、米国サウスウェスト研究所のMichael Poston氏は、
「月面の水やヒドロキシ基がどのように移動するかについて制約を設けることで、
極域の低温領域にどれくらいの量の水が到達できるかを見積もることができます」と語っている。
今回、月の表面全体に水があり、なおかつあまり移動していないということは、
極域にはこれまで考えられていたほどの大量の水はないかもしれない、ということを示唆する。

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マイナビニュース
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