■ゾンビがマヤ文明を滅亡に追いやった!?

「ゾンビ・アポカリプス」という言葉をご存じだろうか?

映画なら『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』、テレビドラマなら『ウォーキング・デッド』といった作品で描かれたテーマで、地球を覆おおいつくすほどのゾンビによって現代文明が滅ぼされてしまうというシナリオだ。

こういう話は、映画やテレビ番組の中だけのはずだった。しかし今は、軍事や医療、科学といった各分野の専門家を巻きこみながら急速に高まりつつ、ひとつの認識を端的に示すキーワードになっている。

つまり、ゾンビは実在するというのである。

実際、有史以前から人間は、死せる者の復活と復ふく讐しゅうを恐れていた。石器時代のシリア、ルネッサンス期のイタリア、ギリシア文明の遺跡からも、ゾンビ・アポカリプスを示し唆さするさまざまな遺物が見つかっている。

中でも特筆すべきは、マヤ文明だろう。

西暦250年から900年ころに最盛期を迎えたマヤ文明は、世界史上稀まれに見る人口密集型文明で、社会的動力に満ちていた。現在のメキシコからホンジュラス、グアテマラ全土に都市が点在し、ホンジュラス西部の都市コパンだけでも、約43平方キロの敷地に6000棟以上の建造物がひしめきあっていた。

しかしこのメソアメリカ最大規模の文明は、突如として人口激減に見舞われる。そのペースは急激で、結果的にマヤそのものが姿を消すことになってしまった。このマヤ文明崩壊の謎は、考古学最大のミステリーのひとつとされている。

大規模な人口減少も大きな謎だが、不思議なことはもうひとつある。マヤの都市から発掘される遺骸や遺骨に、共通する奇妙な特徴が見られるのだ。

それは、数多く残された咬かみ傷と思われる痕跡である。あるいは関節部分に、無理やり引きちぎられたような痕跡も目立つ。こうした特徴のある遺骸が、あちこちの遺跡から掘りだされるのだ。しかも、墓所ではないところに多くの人骨が集められ、埋められていることが多い。

一般的には、マヤ文明崩壊の原因は大干ばつだったといわれている。しかし、本当にそれだけなのだろうか。マヤほどの文明が、死者をその場でまとめて埋葬したとは考えにくい。おそらく、そうせざるを得ない「理由」があったはずなのだ。

また、大規模な村がまるごとひとつ、数日で全滅してしまった証拠も見つかっている。干ばつで食糧の備蓄が徐々に減っていったのではない。しかもそこには、「共喰い」を連想させる凄せい惨さんな場面の証拠や、子供が親を食べたことを思わせる痕跡さえ見つけられるのだ。

■恐怖のゾンビ病が村中に蔓延?

オルターナティブ・アーケオロジーという研究分野がある。主流派科学の枠組みから離れたところで大胆な仮説を展開していく「代替考古学論」だ。この論でよくいわれるのが、マヤ文明崩壊の理由は「ゾンビ病」の蔓まん延だったという仮説である。

ゾンビ病――正確にいえば、ゾンビ・ウイルスということになるだろうか――の蔓延。主流派科学の中ではなかなか出にくい発想であることは間違いない。

こうした可能性に特化して、マヤ文明崩壊の謎に迫ろうとする「ゾンビ・リサーチ・ソサイエティ(ZRS)」というグループがある。

その中核メンバーであるユージーン・フレデリックは、次のように語っている。

「マヤ文明に関しては、ゴーストタウン化した都市がそのまま遺跡になったことを思わせるものが多い。しかもこうした都市は、ごく短期間のうちに、急激に滅びたと考えられる」

フレデリックはまた、死体をその場に埋めざるを得なかった理由についても語っている。ウイルスに感染した人たちが、それ以上の悪影響を与えないようにするためだというのだ。

ZRSによれば、ゾンビ・ウイルスは狂犬病に似た症状をもたらし、感染者が他の人たちを咬むことで拡散していく。こうしたウイルスの拡散過程は、まさに「共喰い」と表現できるかもしれない。

しかし、マヤ人たちも惨状をただ見ているだけではなかった。感染者を殺害し、その場で埋めた。生き返っても動きが取れないようにするため、手足の関節を意図的に壊してからだ。

>>2につづく
http://gakkenmu.jp/column/14775/