私は、幼児期にひどいアトピー性皮膚炎に悩まされました。
夜、眠っている間に手足を 掻か きむしり、朝になると手足は血だらけでした。
すべての爪の間には、乾いた血がびっしりと付着しています。
こまめに皮膚科に通って処方された 軟膏なんこう を塗っていましたが、
母は「この子の皮膚が、一生このままだったらどうしよう」と、とても心配したそうです。

 それが、成長するにつれて徐々に改善し、大学生の頃には、
ひどいかゆみや湿疹などの症状はほとんど出なくなっていました。
アトピーは、年齢が上がるにつれ改善することが多いとされています。
諦めずに皮膚科治療を続けたのもよかったのだと思います。

〈がん、アトピー、ダイエット…〉
 ネット上には、いまだに「○○を食べたらアトピーが治った」などの体験談が出ています。
アトピーだけではなく、「がんが消えた」「ダイエットに成功した」といった情報は、
真剣に悩んでいる人の心に強く訴えかけます。
でも、その多くが特定の食品やサプリメントの宣伝だったりもします。
本当に「その食品の効果」なのか、科学的根拠が示されていないものがほとんどです。

 「治った」「改善した」という話のすべてを、
「ウソだ」「インチキだ」などと一刀両断するつもりはありません。
しかし、がんやアトピーなどの標準的な治療を並行して受けていた場合は、
標準的な治療の効果が表れた時期と「〇〇」を食べ始めた時期がたまたま合致した可能性もあります。

 大きな不安を抱いていると、本当なのかどうかを見極める前に、
藁わら にもすがる思いで体験談を信じてしまうかもしれません。
自分や家族が病気になると、心が弱ってしまうのが人間です。
そんな弱みにつけ込んで、科学的根拠のない食べ物を、体験談で装飾して売ろうとすることは許せません。

 本来の「食事療法」は、科学的根拠に基づいた食事方法を実践することで、病気の改善を図るものです。
例えば、糖尿病の食事療法で「糖質の摂取量を適切に調整すると、
血糖値をコントロールすることができる」という根拠は、たくさんの研究をもとに導き出されています。
それでも、食事療法だけではなく、薬物療法、運動療法を組み合わせることが大切なので、
栄養指導の場面で「こういう食生活さえすれば糖尿病が治る」とは言いません。

続きはソースで

yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180124-OYTET50054/