全身の血管に炎症が起こる川崎病の患者数が近年急増し、2015年には最多の1万6323人に上った。東京都練馬区に住む小学2年の男児(8)は3歳の時にかかり、首のリンパ節が腫れて痛み、高熱が9日間続いた。今も心臓の血管に後遺症があり、毎日薬を飲んでいる。川崎病の今を探る。

〈乳幼児に多く、原因不明…冬に患者数増加〉

川崎病が近年急増…発症から10日以降も熱続けば、心臓血管に瘤できやすく
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 川崎病は、4歳以下の乳幼児に多い。主な症状は、

〈1〉発熱
〈2〉両目の充血
〈3〉唇が赤くなり舌がイチゴ状にぶつぶつになる
〈4〉発疹
〈5〉手足が赤く腫れ熱が下がると指先の皮がむける
〈6〉首のリンパ節が腫れる――の6項目。

うち5項目以上で診断され、それに満たない場合は不全型とされる。

 川崎病は、小児科医の川崎 富作とみさく さんが1960年代に世界で初めて発表し、この名がついた。
発症後、心臓の冠動脈に 瘤こぶ ができやすいのが特徴で、患者の約2%に後遺症が出るといわれる。
瘤により将来的に血管が狭まったり、血栓が詰まったりして、心筋 梗塞こうそく や狭心症になる危険がある。

 患者は、医師や国民に認識が広がり数が増えた70〜80年代にも、1万人以上となることがあったが、
その後も増え続けている。発症の原因がわからず、増加の理由も不明だ。全国調査によると、冬に患者数が増加し、
季節ごとに変動が大きい。親子や兄弟で川崎病を経験するケースもある。

 調査を行う自治医科大教授(公衆衛生学)の中村好一さんは、「何らかの感染が引き金となり、
遺伝的に感受性の高い人が発症する可能性がある」と話す。

 この男児は、当初、ロタウイルスに感染。下痢などとともに川崎病の症状も出て、熱は40度を超えた。
病院で、炎症を抑える免疫グロブリン製剤の点滴を2回行ったが症状は治まらず、
発症から10日目にステロイド薬を使うと熱が下がった。

 その後、冠動脈に瘤ができ、10ミリまで大きくなった。
今は、血栓ができないように血を固まりにくくする薬を飲み、大きなけがをしないよう気をつけている。

 瘤は、発症から10日以降も熱が下がらないと、できやすくなる。早く炎症を止め、
10日目までに熱を下げるのを目標に治療する。

〈治療には長短〉

 免疫グロブリン製剤で8割程度の患者は熱が下がる。
下がらない場合、免疫グロブリン製剤の追加、ステロイド薬の使用、インフリキシマブの使用、
血中の特定の成分を取り除く 血漿けっしょう 交換などがある。インフリキシマブは、
「生物学的製剤」という種類の薬でリウマチ治療薬などとして知られるが、2015年に川崎病にも使えるようになった。

 ただ、ステロイド薬は瘤ができてからでは悪化させる可能性があり、血漿交換を行うには数日かかるなど、
どの治療も長短がある。

 多くの患者を治療してきた横浜市立大学病院の小児科医、伊藤秀一さんは、
「免疫グロブリンを使った治療が効かない場合、その患者に有効な治療法を迅速に見極め、
10日目までに熱を下げることが数十年後の患者の健康につながる。異常に気付いたら早めに受診してほしい」と語る。

 男児は、両親とともに川崎病の勉強会に参加している。
母親は、「将来、病気のことを自分で医師に説明できて、薬も飲み続けられるよう、しっかり理解してもらいたい」と話す。

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yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20171225-OYTET50032/