次なる惑星探査の対象であり、人類の移住先としても注目が集まっている火星にはかつて水が存在し、
何らかの微生物が生きていたとも考えられています。
しかし一方で、実際には火星の表面はスポンジのような状態の岩石に覆われており、
生命が存在する環境を作り出せない状態であることが研究によって明らかにされています。

The divergent fates of primitive hydrospheric water on Earth and Mars | Nature
https://www.nature.com/articles/nature25031

Scientists finally establish why there is no life on Mars | The Independent
http://www.independent.co.uk/news/science/life-on-mars-no-oxford-university-proof-explanation-ufo-alien-a8120796.html

この研究結果はオックスフォード大学の研究チームが発表したもの。
火星表面を構成する外殻の特性について調査したところ、
かつて火星に存在していた水のはたらきによって生命の存在には適さない場所へと変化したといいます。

30億年前の火星の表面には、地球のように水が存在していたと考えられていますが、
現在の火星の表面は岩だらけで荒涼とした風景が広がっています。かつて存在した水がどうして姿を消してしまったのか、
そのことについて世界中の科学者が研究を進めており、
磁性が変化・弱化したことによって宇宙空間に放出されてしまったなどとする考え方が唱えられています。

今回の論文の中で研究チームは、火星には水がまだ残されており、
地表の物質と化学変化を起こした状態で岩の中に閉じ込められていると述べています。
研究チームを率いたジョン・ウェイド博士は「火星では、新しく噴出した溶岩と水が反応することで玄武岩質の外殻が作りだされ、
『スポンジ様効果』を生みだしました」と述べています。

ここで触れられている「スポンジ様効果」とは、水と岩が化学的に反応することで岩の鉱物組成が変化して、
その結果惑星表面が乾ききった、生命の存在に適さない環境を作り出してしまうというものです。
この現象は原始段階の地球でもあったと考えられていますが、惑星の組成などの要因で効果のレベルはさまざまに変化し、
地球のような生命を保持できる惑星とそうでない惑星とに分かれてきたとのこと。

火星が乾ききった大地を持つ惑星になったのは、火星を構成する物質の比率で鉄が占める割合が高すぎたためと考えられています。
岩石、またはその溶岩に含まれる鉄が多すぎたために、火星は地球などに比べて酸化の程度が強い惑星へと変化してしまったとウェイド博士は述べています。

しかしこの岩石は、他の種類の岩石に比べて25%も多くの水分を吸収する特性があるとのこと。
そして、岩石に吸収された水は、地殻の奥深くへと沈んでいくと論文では示されています。
つまり、現在の火星の地表には水が存在しませんが、地殻内部には水が残っているという可能性が示されているというわけです。
このことについて、イギリス・ダラム大学のジム・マケルウェイン教授は「火星にかつて大量の水が存在していたことはすでに知られていますが、
現在でもその水は『氷』として存在していると考えられます」と語っています。

この研究では、惑星を構成する岩石の組成によって、その惑星が生命の存在に適したものになるかどうかが決定されることが示されました。
ウェイド博士は、金星など太陽系の他の惑星についても同様の調査を実施したいという意向を示しています。

GIGAZINE
http://gigazine.net/news/20171221-why-no-life-mars/