吉野太一郎2018年9月29日19時34分
 世界的に人気のボードゲーム「バックギャモン」のプロ、矢沢亜希子さん(37)=東京都豊島区=が、今年8月、世界選手権で4年ぶり2回目の王座に輝いた。
複数回の優勝は世界でも過去に3人しか達成していない。末期がん寸前の子宮体がんを克服できたのは、ゲームで培った「展開を読む力」だった。
 モナコで開かれた今年の世界選手権。参加者が対戦を繰り返し、先に2敗した人が脱落していくルールで、矢沢さんは無敗のまま決勝に進出。
優勝賞金6万ユーロ(約780万円)を手にした。「『死ぬかもしれない』と無我夢中だった前回と違い、心理的に優位にゲームを進められました」
 学生時代にバックギャモンを知ってとりこになり、2004年には国内タイトルも手にした。しかし12年、「ステージVc」の子宮体がんと診断され、医師に「手術しなければ1年もたない」と言われた。
 子宮の奥にできたがんは、過去の検査でも見逃されていた。「子宮を残せば子どもを産めるかも」と悩んだが、冷静に「先の展開」を読んだ。
「後になってやっぱり生きたくなったら、手術しなかったことを後悔するだろう。できるだけのことをやって納得しよう」と考え直した。
 子宮、卵巣、卵管、リンパ節をすべて切除し、抗がん剤治療をしながら「自分が生きた証しを残そう」とバックギャモンで世界をめざすことに。副作用でサイコロを握る手がしびれ、全身の痛みと闘いながら14年に世界選手権を制した。
 今は脚のむくみなど後遺症はあるが、再発の可能性はほぼなくなった。「私が勝って、この面白さを日本に伝えていくしかない」と、体調と相談しながら平均月1回は世界各地で開かれる大会に参加する。
https://www.asahi.com/sp/articles/ASL9L3C9DL9LUTIL00B.html