マグミクス2021.02.21
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 男の子なら、誰もがウルトラ怪獣を好きになったことがありますよね? 好きな怪獣は人によってさまざまですが、やはりウルトラマンたちを苦しめた強い怪獣の人気は高いものです。昭和世代で強い怪獣と言えば、必ず挙がる名前はやはり「ゼットン」。ウルトラマンに完全勝利した怪獣だけに、誰もが「強敵」「最強」と認めていました。

 〇〇怪獣でなく「宇宙恐竜」というセンスのいい別称。目や口が記号化しているポーカーフェイスな顔。ウルトラマンの銀に対して黒いボディ。そして「1兆度の火炎」というオーバースペックなパワー。だいたいの男の子はゼットンで「兆」という単位を知りました(笑)。

 ちなみに、ゼットンとの戦いで前向きで倒れたはずのウルトラマンが、次のシーンからあお向けになっている矛盾を指摘する人がいます。これは本来なら倒れたウルトラマンをゼットンが攻撃し続けるというシーンが途中にあったのですが、あまりにも凄惨なシーンだったからカットされたためだと聞きました。確かに、ただえさえ負けているのに、さらに死者に鞭打つような場面は子供にとってショックだったかもしれません。

 しかし、実際の放送内容でもトラウマ級のショックで、この最終回を見て人生が変わった人もいました。プロレスラーの前田日明さんです。子供の時の前田さんは、最終回を見てショックを受け、「打倒ゼットン」を目標にプロレスラーを目指したのは有名な話です。このように、昭和世代ではゼットンの評価が上がる一方、下がってしまったのが負けた初代ウルトラマンの評価でした。当時の雑誌を読んでいた世代なら、ウルトラ兄弟が誕生して以降、万年兄弟最下位の地位にいたことを記憶していることと思います。

 マンガなどでも兄弟で一番最初に倒される役でしたし、学習誌のウルトラ兄弟比べでは最下位の理由に「ゼットンに負けたショックがまだ尾を引いている」などと言われていました。いま振り返れば、偉大な初代に対して無礼な話です。『帰ってきたウルトラマン』で再登場した時、初代ウルトラマンが雪辱戦をするという構想もあったようで、もし現実になっていれば評価は変わっていたかもしれません。

 しかし、ゼットンの評価は変わらなかったと思います。その理由に、帰ってきたウルトラマンに敗北しても、その人気は不動のものでした。それは悪の魅力、ウルトラマンに対してのアンチヒーローだったからでしょう。何せ第2期ウルトラブームのころの一部のマンガでは、怪獣にも関わらず宇宙人のようにセリフがあったくらいです。それほどまでに、昭和におけるゼットンは別格の存在でした。らくテレビでウルトラシリーズの新作がなかった平成のころ、ゼットンが合成怪獣だったという説が持ち上がりました。黒いボディはメフィラス星人、蛇腹の体はレッドキング、バリアはバルタン星人というものです。

 真相はわかりませんが、『ウルトラマンパワード』に出た「パワードゼットン」は、バルタン星人に作られた対ウルトラマン用怪獣兵器でした。また、「ゼットン二代目」を使っていたバット星人はゼットンの養殖にかけては宇宙一という設定が『ウルトラマンメビウス』のDVDで明かされています。とはいうものの、ゼットンの強敵感は一定値保たれていました。それは『ウルトラマンティガ』をはじめとする平成三部作のころまであったと思います。しかし、過去の怪獣たちが頻繁に登場する最初の作品となった『ウルトラマンマックス』以降から、「最強」というより「強豪」という感じにスケールダウンしていきます。ゼットンというだけでウルトラマンたちをピンチに陥れるのですが、最終的には負けてしまう役どころです。さらにEXゼットン、ハイパーゼットンなどという今風の強化形態が現れるようになり、最強だったゼットンの神話は崩壊の一途をたどることになりました。

 ほかにもパンドンと合体したゼッパンドン、キングジョーと融合したペダニウムゼットン、バルタン星人がゼットンの能力を取り込んだゼットンバルタン星人といった、他のウルトラ戦士の力を使う最近のウルトラマンのような合体形態もよく見かけるようになります。とはいえ、やはり子供のころから刻まれているイメージは簡単に上書きされるものではありません。先日、ネットで配信されていた『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』に登場した宇宙恐魔人ゼット率いるゼットン軍団は、これまでに現れたさまざまなゼットンが登場し、子供の時のようにワクワクしながら鑑賞できました。ただ人によってはゼットンが戦闘員みたいだという否定的な意見もあります(笑)。
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