「“著作権厨”をなんとかしたい」――慶応義塾大学の田中辰夫教授は1月10日、都内で開かれたシンポジウム「著作権延長後の世界で、われわれは何をすべきか」で、こう話した。著作権法の在り方について考える上で、現行の著作権法を絶対と考える“著作権厨”の存在がネット上での議論を阻害しているという。
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2018年12月に著作権保護期間が作者の死後50年から70年に延長されたことを受け、著作権者と連絡がつかない、あるいは著作権者不明の著作物「オーファンワークス」の増加が懸念されている。オーファンワークスを利用するには、著作権者の捜索や文化庁への申請などの手間がかかり、新たな形での流通や資料としての保全が進めにくいといった課題もある。

 田中教授はオーファンワークスへの対策について、「柔軟かつ複合的に考え、一番良い形を目指すことが重要。(著作物の中には)誰が作ったのか分からないものもたくさんある。これを活用することが良い文化政策であるという議論を盛り上げなければならない」と主張する。

 まずはオーファンワークスの認知度を高め、改善に向けた議論を進めていく必要があるが、ネット上では、著作権を過剰に指摘することで柔軟な議論を封殺してしまう“著作権厨”が多く、建設的な議論を行うのが難しいという。「○○厨」とは、幼稚な言動や自身を誇張して表現する人などを表すネットスラングだ。

慶応義塾大学の田中辰夫教授
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 田中教授は「議論を阻む一番の障害が、著作権に非常にうるさく、現行の著作権法を絶対だとまきちらす“著作権厨”だ」と指摘。「何か新しい試みをしようとする人に『これはいかん』と言う人がいる。せっかくの試みも縮小してしまうし、議論も封殺されてしまう。彼ら(著作権厨)をなんとかしたい」と話す。

 具体的な対策として挙げたのは「“著作権厨”という言葉を広め、その影響力を下げること」(田中教授)。縛られた考え方にとらわれず、新しい発想を持つ人々が有益な議論をネット上でできるようにする環境作りが重要とした。

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