奇策 ハイパーインフレと日銀 新中央銀行、新通貨しかない=藤巻健史
私の長いディーラー人生の経験から、ドル・円の動向を決める2大要因は経常収支動向と日米金利差だと思っている。その2大要因が同時に円安方向へ、トレンドとして向いてきたのは初めての経験だ。

中略
日銀はライヒスバンク?
このような状態になった時に考えられる対処法は以下の三つだ。いずれも日銀の負債の圧縮にほかならない。

(1)法定通貨を円からドルに換える、(2)1946(昭和21)年のように預金封鎖・新券発行を行う、(3)第二次世界大戦後のドイツのように中央銀行の取り換えを行う──。

 私は(3)の手法が適切だと思っている。46年は終戦後だが、日本はまだ明治憲法下だった。私有財産権が確立された現憲法下で(2)を行った場合、後に訴訟が頻発する可能性がある。一方、(3)では日銀の倒産・解散なので、倒産会社の負債が消滅するだけだ。私有財産権を犯したとのクレームは回避できる。

 この手法を取るには、日銀を残務処理機関として残し、新中央銀行から新通貨で資本投入を受ける。その新紙幣1枚を、例えば福沢諭吉1万円札1000枚と交換するのだ。財務内容が健全な中央銀行が創設されればハイパーインフレは終息するし、国民の塗炭の苦しみと交換に究極の財政再建が成される。終戦後のドイツで国力、供給能力などは何も変わっていないのにライヒスバンク(旧中央銀行)を廃し、代わりにブンデスバンク(新中央銀行)を創設し、ハイパーインフレが沈静化されたことで、実証されている。

 中央銀行は、社会に必要不可欠なインフラであるがゆえに空白期間は許されない。日銀に出口(インフレ時に債務超過にならずに金融を引き締める方法)がない以上、新中央銀行の設立準備をなるべく早く開始すべきだと考える。そして、平時に財政健全化を怠り、財政ファイナンスを行えば、必ずやこのような悲惨な目に再度遭うことを頭にたたき込まねばならない。二度とこのような愚行を繰り返さないために。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220426/se1/00m/020/021000c