【シリコンバレー=白石武志】米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は19日、2021年の自らの納税額が110億ドル(約1兆2500億円)超に上る見通しだと明らかにした。単年の個人の納税額としては米国で過去最大になると主張している。

「疑問に思っている人のために言っておくと、私は今年110億ドルを超える税金を納める予定だ」。マスク氏は19日夕、ツイッターに唐突にこう書き込んだ。一部の米議員が資産規模に応じた税金を負担していないと同氏を批判し続けていることにいらだちを募らせたためとみられる。

業績好調なテスラの株価上昇でマスク氏は21年に「世界一の金持ち」になったが、一般に資産を売却しない限り含み益は課税対象にならない。多額の税金が発生するのは、テスラが同氏に付与したストックオプション(新株予約権)による報酬が22年に行使期限を迎えるためだ。

マスク氏はストックオプションの行使に伴って生じる源泉徴収義務を果たすため、11月から自ら保有するテスラ株を段階的に売却している。米メディアの集計によるとこれまでに140億ドル相当を放出した。売却額は最終的に200億ドル相当に達すると見込まれている。

米国では富裕層に有利な税制が格差拡大を助長しているとの批判が高まっている。米誌タイムがマスク氏を21年の「今年の人」に選出したことに疑問を呈した民主党急進左派のウォーレン上院議員は13日、「不正な税制を変えて『今年の人』に実際に税金を納めさせ、他人にたかるのやめさせよう」とツイッター上で呼びかけた。

同議員の主張に猛反発したマスク氏は14日、投稿に直接返信するかたちで「私は今年、歴史上のどの米国人よりも多くの税金を払うだろう」と反論していた。米国人の納税記録は米内国歳入庁(IRS)で機密扱いにされているが、米メディアは110億ドル超の納税額が米国史上最大になるというマスク氏の主張はおおむね正しいとみている。
2021年12月21日 7:07
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN20DJB0Q1A221C2000000/