韓国から日本、アジア、そして世界的な現象となった「K-POP」。韓国の7人組アイドルグループBTS(防弾少年団)が今年、米音楽界で最高の栄誉とされる「グラミー賞」にノミネートされたのは、その象徴的なシーンでもあった。

 欧米の最新のトレンドを積極的に取り入れ、ソーシャルメディアで世界中のファンから声が届き、メンバーは多国籍化――。KOREA(韓国)の頭文字「K」は、顔ぶれも、ファンの裾野の広がりも、国境を軽々と超えつつある。「K」はどんな旅を続けてきたのだろう。そして、どこへ向かうのだろう。ブームの舞台の一つである日本の人たちの視点から、軌跡をたどってみたい。

 「No matter who you are, where you’re from, your skin colour, gender identity: speak yourself(あなたが誰なのか、どこから来たのか、肌の色やジェンダー意識は関係ありません。ただ、あなたのことを話してください)」

2018年9月、国連本部。BTSのリーダー、RMさんが若者たちに向けてスピーチをした。他人の目を気にすることなく、自分自身を好きになってほしい――。そんなメッセージが世界中の人々の共感を呼んだ。

翻訳家が気づいたBTSの「吸引力」
 韓国カルチャーに詳しいライターで翻訳家の桑畑優香さんは、このスピーチを聞いて感じた。「このアーティストが持つ吸引力は、他の人たちとは違う」

 BTSは韓国で、「防弾少年団(バンタンソニョンダン)」として13年にデビューした後、翌年、日本に進出し、日本語の曲を歌った。日本でなじみのある他のK-POPアーティストと似た道を歩んできたかに見えた。しかし、桑畑さんはRMさんの言葉に、「世界を動かす器だ」と感じ取ったという。スピーチを投稿した国連児童基金(ユニセフ)のツイッターには、いろいろな言語で自身の生い立ちや心情、悩みを語る若者のコメントがあふれた。

 歌唱力やダンスの技術、ルックスなど、BTSの人気の理由はさまざまに挙げられてきたが、桑畑さんが注目するのは歌詞だ。
以下ソース
https://www.asahi.com/articles/ASP5L3CH7P4GUHBI032.html