新型コロナウイルスの大流行は、世界中の航空会社の経営に深刻な打撃を与えている。なかでも状況が過酷なのが、国内線を持たない香港のキャセイパシフィック航空だ。同社は10月21日、全世界のグループ従業員の4分の1近くにあたる8500人を削減するリストラ計画を発表した。

同社のグループ従業員数は今年6月末時点で約3万3000人。勤務地別では本拠地の香港が8割以上の約2万7600人を占める。キャセイ航空はすでに新規採用を凍結しており、さらに自己都合退社などを除外した実質的削減は全体の17%の5900人、そのうち香港の従業員が5300人を見込んでいる。

 キャセイ航空は同時に、100%子会社の地域航空会社「キャセイドラゴン航空」の運行停止も発表した。ドラゴン航空の路線はキャセイ航空および別の100%子会社の格安航空会社(LCC)「香港エクスプレス」が運行を引き継ぐ方針で、関係当局に許可を求めている。

■賃上げ凍結、年末ボーナスも見送り

 人員削減とともに人件費も抑制する。高級管理職の減俸を2021年いっぱい続けるほか、地上職員が対象の自主的な特別休暇プログラムを2021年上半期に実施する。さらに全従業員の賃上げを2021年まで凍結し、2020年の年末ボーナスの支給も見送る。

 「抜本的な構造改革を断行しなければ、グループの経営は行き詰まる。そうなれば従業員の雇用をできる限り守ることも、香港の航空輸送の中枢を担う企業として顧客に対する責任を果たすこともできない」。キャセイ航空のケ健栄CEO(最高経営責任者)は、リストラ計画発表時の声明でそう述べた。

 なお、香港政府は今年6月、キャセイ航空の破綻を回避するため政府基金を通じて273億香港ドル(約3718億円)の資本注入に踏み切った。今回のリストラ計画について香港政府の陳茂波(ポール・チャン)財政長官は、キャセイ航空が抱える経営や財務の問題に適切に対処しなければ「国際航空輸送のハブである香港の地位と発展がダメージを受け、香港全体の利益を損なう」とコメントした。
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