コロナ禍で海外旅行が難しいなか、国際線の旅を疑似体験できるフライトや施設が人気だ。成田空港発着の遊覧飛行には、定員の100倍超の応募があった。業績悪化にあえぐ航空会社は、空の旅の魅力をアピールして海外旅行離れを防ごうと模索している。

9月20日、成田空港から機体全体にウミガメを描いた全日空(ANA)の超大型旅客機A380が飛び立った。愛称は「フライング・ホヌ(英語とハワイ語で『空飛ぶウミガメ』の意味)」。家族連れや航空ファンを乗せ、富士山などを巡り成田に戻る1時間半の遊覧飛行だ。機内ではハワイの音楽や映像が流れた。

 家族3人で搭乗した千葉県習志野市の会社員、田部井裕介さん(38)は「ハワイ気分を満喫できた」と満足げだった。

 同機は元々、ANAが昨年、成田―米ホノルル線で飛ばすために2機導入したが、コロナ禍で今年3月末に運休となり、使用できなかった。ウミガメを描いた大型の機体はなかなか他路線に転用できず、6月に機体整備の一環で乗客ゼロで飛ばすと、それをニュースで知った2家族から「ホヌに乗りたい」との熱烈なメールがANAに届いた。

 ANAは要望に応じ、8月下旬に第1弾を企画。エコノミークラス1万4千円〜1万9千円、ファーストクラス5万円などの価格設定だったが、募集人数の150倍を超える反響があった。9月20日の第2弾も約110倍。今後は成田以外の発着を含め継続を検討している。

 ANAの4〜6月期の旅客数は国際線で前年同期比96%減、国内線で同88%減となるなど、厳しい経営状況が続く。

 今回の企画をしたANAセールス(東京都中央区)の池田暢也・経営企画部副部長は「今年度中には観光目的の海外旅行客は前年並みには戻らないとみている。旅行への関心が失われないようアフターコロナの旅支度をしていただく狙いもある」と話す。
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