日本企業の間で、ジョブ型雇用を導入する動きがにわかに活発になってきた。ジョブ型雇用とは仕事内容を詳細に記述したジョブディスクリプション(JD、職務記述書)に基づいて働く雇用制度で、欧米企業などが広く採用している。経団連が以前から導入を働きかけてきたが、新型コロナウイルス禍を機に、多くの企業が本格導入を検討し始めた。

 例えば日立製作所は、一部職種にとどまっていたジョブ型雇用を全社的取り組みに拡大する。2021年3月までにすべての職種に対してJDの標準版を作成し、2021年度以降に本格的に導入する。富士通も2020年度中に、まず管理職を対象にジョブ型雇用を導入し、その後、一般社員にも対象を広げる予定だ。

 新型コロナ禍がジョブ型雇用の導入の動きを後押ししたのは間違いない。テレワークの導入により、職務内容を厳密に定めないで時間で縛るような働き方が難しくなったからだ。テレワークも含めた柔軟な働き方を実現していくためには、ジョブ型雇用の導入が必要との認識が広がってきたわけだ。

 だがジョブ型雇用の導入の狙いは他にもある。横並びの給与で広く様々な職務を経験させる従来の日本型雇用制度では、DX(デジタル変革)を主導できる優秀なIT人材などを獲得・育成するのは難しい。職務を厳密に定めて能力や成果に応じて高給を保証するジョブ型雇用は、デジタルの時代に日本企業が生き残る上で、極めて重要な取り組みと言える。

厳格なJDを作成するのは困難
 問題は欧米のような厳格な契約社会の産物であるジョブ型雇用を、日本企業で有効に機能させられるかだ。そもそもきちんとしたJDを作成できるかが疑わしい。欧米企業のJDは職務内容、責任範囲、義務、要求される職務経験やスキルなどを事細かに記載している。職務などを限定しないで働くメンバーシップ型雇用しか知らない社員ばかりの日本企業が、欧米流のJDを作成するのは至難の業だろう。
以下ソース
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00849/00027/