【北京=原田逸策】中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した2020年3月末の外貨準備は、前月比460億ドル(約5兆円)少ない3兆606億ドル(約330兆円)だった。減少幅は中国が資本流出規制を大幅に強化する直前の16年11月(690億ドル)以来3年4カ月ぶりの大きさ。新型コロナウイルスによる世界の金融市場の動揺で中国からも資本が流出した可能性がある。

外貨準備の残高は18年10月以来、1年5カ月ぶりの低水準。国家外貨管理局の王春英報道官は「一部の通貨が米ドルに対して下落した」などと減少の理由を説明した。

たしかにドル指数は3月に上昇したが、上昇したのは主に新興国の通貨に対してだ。先進国の通貨であるユーロや日本円の対ドル相場をみると、3月末と2月末で大きな変動はなかった。

中国は外貨準備でドル建て以外にユーロ建てや円建ての債券を多めに保有しているとみられ、為替変動によりドル換算の外貨準備が目減りしたとの説明は説得力に乏しい。さらに官民で1兆ドル以上を保有する米国債の価格は上昇(利回りは低下)しており、外貨準備を押し上げたはずだ。

それにもかかわらず中国の外貨準備が大幅に減ったのは、資本流出が起きた可能性が拭えない。中国企業の1〜3月の外貨建て社債の発行額は前年同期より3割減った。外貨建ての借金の返済原資を市場で調達できなければ、市中銀行を通じて外貨準備から企業に融通することになり、結果として外貨準備が減る。

中国は15〜16年に深刻な資本流出を経験し、外貨準備もピーク時の4兆ドル弱から17年初めに3兆ドルを割り込んだ。16年末になりふりかまわず資本流出を規制したことで、外貨準備の減少ペースに歯止めをかけた経緯がある。

2020/4/7 18:37
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57774410X00C20A4FF8000/