>>2 から続く

 こうしてデータとプロセスを分離することでDXに必要なデータ活用のための環境が整う。「データ活用に欠かせないテクノロジーがS3のようなデータレイクであり、さまざまなデータを集め機械学習で分析、利用していく」(渡邉氏)

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近年のAWS利用動向で特に拡大するのが機械学習になる

 機械学習はまだ新しい用途だがユーザー数は急拡大しているという。ここではパートナー企業のナレッジコミュニケーションズが手掛けた電子書籍サービス会社ブックリスタにおけるデータ分析環境の構築事例が紹介された。同社では約60万点の電子書籍を配信するが、従来は8人のデータ分析担当者がそれぞれに異なるツールを使い、ノウハウの共有なども進んでいなかった。
ナレッジコミュニケーションズは、Amazon SageMaker Jupyterノートブックなどを用いてデータの統合化と分析ツールの標準化を図り、トレーニングを含む支援を行った。その結果、工数やコストの大幅な削減と分析ノウハウの共有化などが実現されたという。

 2020年の戦略における「インダストリー」では、特に金融や製造、公共を重点とする。渡邊氏は、社会インフラの一つとして高水準の信頼や安全、安定が要求される金融でもパブリッククラウドの採用が進み、メガバンクから地方銀行、保険などに拡大しているとした。製造業でも「インダストリー 4.0」構想に基づくIoTやAIなどを活用した高度化への取り組みが本格化しつつある。

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製造業向けのソリューションマップ

 特に行政や教育、非営利法人などを対象とする公共は、AWSが2019年から注力する業界になる。ここでは執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏が登壇、国内でも政府が「クラウドバイデフォルト」の方針を表明してから、クラウドの利用拡大が急速に進んでいるとした。

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AWSは2019年からグローバルで公共分野の顧客獲得に注力している

 同氏によれば、行政系のユーザーは組織横断で利用する共通IT基盤としてのクラウド利用が多く、教育系のユーザーはオープンプラットフォームとして国や地域をまたがるクラウドを共同活用するなど、より先進的だという。

 AWSは「公共部門パートナープログラム」を導入しており、参加企業は2018年から2019年にかけて78%増えた。ただ、新しい領域であるだけに同氏は、「社数としてはまだまだ少ない。大きな成長が期待できる領域であり、ぜひプログラムに参加してほしい」と述べた。

 再び登壇した渡邉氏は、クラウドのエンジニア育成やコミュニティー強化は中長期的な取り組みだとした。エンジニア育成については、インフラ側とアプリケーション側の“分業”というより今後アプリケーションエンジニアがインフラにも携わっていくとし、同社としてもパートナーのスキル育成に投資していくという。

 コミュニティー施策では、特にSaaSパートナーとの連携を強化していくとし、ミートアップやネットワーキングを通じたエコシステムの情勢とパートナー連携ソリューションを充実させる。

 最後に「地域でのパートナー活動の拡大」では、全ての都道府県からAPN企業が参加することを目指す。現在は38都道府県の企業がAPNに参加し、この1年で8県増えた。APN参加企業がいないのは残り9県で、全国各地からAPN参加企業を募る取り組みも行っていくとした。

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国内にはパートナー企業が所在しない県がまだあるという