アナログ時代のビジネスのしくみをデジタルが破壊していくなかで、日本企業は低生産性・高コスト体質から抜け出せず、人口減に伴う消費の縮小で、都市と地方の格差はさらに拡大する――。後戻りのできない「2025年の崖」がいよいよ間近に迫っている。

最初に《2025年の崖》について、おさらいをしておこう。

現在進行しているデジタル化は、過去にわれわれが経験した電算化、情報化とは本質的に異なる。IoT、AI、RPA(Robotic Process Automation)、ビッグデータといった技術により、仕事や事業の形態が根本から変わる。

預貯金の通帳や運転免許証、健康保険証などはすべてスマートフォンに入ってしまう。自動運転技術によってドライバーの需要は激減し、AIが病気を発見し治療や手術の判断が迅速になる。市町村の窓口業務から人の姿が消える。銀行の支店はなくてもよくなる。顔認証や目の光彩で本人確認が行われるようになり、現金もクレジット決済の手続きもナシで買い物ができる。

こうした変化が積み重なると、産業と雇用の構造が変わり、仕事の仕方が変わる。情報系、サービス系のITシステムだけでなく、受発注・生産・在庫管理など業務系、財務会計、人事給与といった基幹系のITシステムも根本から見直すことになる。

20世紀型の業務において、多くの労働者が担ってきた「プロセス」がすっ飛ばされ、いきなり「結果」が出力される時代になるからだ。

「レガシー」が社会を壊すおそれ
行政機関の証明書が不要になり、手続きはワンスオンリー/ワンストップ化し、単純な事務作業はシステムに任せ、専門知識がなくても一定レベルの仕事ができるようになる。DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、ヒト・モノ・カネの「中抜き」と「省略」のシステムであると言える。

しかし、話はそう簡単には進まない。2025年までにITの「断絶」がやってくる。

具体的には、日立製作所のメインフレーム製造撤退、Windows7/Windows Server 2008や統合会計パッケージ「SAP ERP」のサポート終了などが挙げられる。PHSやPSNT(固定電話網)の廃止も迫っている。

そうしたシステムを作ってきたIT技術者が、退職年齢に近づくのも大きなリスクだ。

メインフレームとCOBOLが全盛だった1980年代の新人エンジニアは、全員定年を迎え、システム開発・運用の現場から姿を消す。当時から使われ続けている古いシステムを作り直すにしても、土地勘のあるナビゲータがいない、地図もない状態では、システムはブラックボックス化し、刷新は難しい。

現在の社会・経済は複数のシステムが複雑・密接に連携し、数千、数万の業務プロセスが相互に絡み合って成り立っている。センサー、監視カメラ、スマートフォン、タブレット、パソコンなどから取り込まれた様々なデータが、目的・用途ごとに集積され処理されている。

ところが、この途中に20世紀型のレガシーシステムが紛れ込んでいると、流れが滞ってしまう。結果として経済・社会の動きがちぐはぐになる。計算ミスだけでは済まない。システムが誤動作すれば想定外のとんでもない事故が起こるかもしれず、誰もその暴走を止められない……。
以下ソース
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70213