>>1 から続く

トヨタは2018年に、新世代カローラとしてハッチバックタイプの『カローラスポーツ』を先行して市場投入している。カローラスポーツは『クラウン』と同時期に発表され、スポーツ性能に加えDCM搭載とT-Connect対応でプレミア感のあるモデルといえる。そして1年後、セダンとワゴンは、国内市場に特化したパッケージングが特徴である。安心・安全機能(トヨタセーフティセンス)とコネクテッド機能(T-Connect)はカローラスポーツからの正常進化と考えてよいが、デザイン、カラー、取り回しを含むユーティリティといったパッケージは、日本を強く意識している。

共通プラットフォーム戦略やグローバルモデル戦略で考えると、時代に逆行しているといえなくもない。しかも、成熟しきってあまり伸びしろのない日本国内の市場に特化したモデルの投入にどんな狙いや目的があるのだろうか。

トヨタが、カローラについてグローバルモデルと国内専用モデルを展開するのは、背景に絶滅寸前のセダンタイプを国内市場に存続させたい意図があるのではないかと考える。輸入車などを含めると、国内でもセダンの市場がなくなるとは思えないが、すでに数えるほどしか残っていない国産セダンのうち、カローラが消滅する可能性はゼロとはいえない。

かつては国民車としてライバルを競った日産『サニー』は10年以上前に生産中止となっている。トヨタの販売体制のもとカローラはいまでも世界で売れているが、国内カローラセダンのオーナーの多くが60歳代という。『アクシオ』はほとんどがフリートユースだ。セダンが若い世代に受け入れられないと、いずれカローラセダンの生産も中止を余儀なくされるだろう。

トヨタとしては、世界でいちばん多く生産された乗用車としてギネス認定もされているカローラを、日本市場だけだからといって消滅させたくはないだろう。若い人にも受け入れられるカローラの開発は必然だったのではないか。トヨタの車両設計は,セダンがあればセダンの設計を基本にして、ハッチバックやワゴンなどバリエーション展開していくという。カローラスポーツを1年前に先行投入しているが、新型カローラもじつは今回市場投入されるセダンの設計からスタートさせたそうだ。つまり、そのころからカローラのテコ入れは始まっていたといえる。

新型のセダンとツーリングが狙うターゲットは30代から40代。国内専用設計となる、運転のしやすさ、取り回し、シートアレンジ、カラーリングは、若い家族世帯を意識している。小さい子どもがいるならツーリング。夫婦ふたりならセダンとなるだろう。パワートレーンもガソリン、ハイブリッドともに1.8リットル・エンジンと1.2リットルターボが用意され、グローバルモデルより小さいが、3ナンバーとなる。余裕のあるエンジン、MT設定がある1.2リットルターボ、そしてディスプレイオーディオやコネクテッド機能は、若いファミリーやスマホ世代へのメッセージともとれる。

市場の評価はどうなるかまったく予断を許さない。新型カローラの若返りに注目したい。