ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は4日、韓国大統領府で文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談した。大統領府によると、孫氏は「今後、韓国が集中しなければならないのは一にも人工知能(AI)、二にもAI、三にもAIだ」と語り、国家を挙げてAIに集中投資するよう提言した。

孫氏は韓国が通貨危機に見舞われた直後の1998年、当時の金大中大統領と会談した。その時には「韓国が集中すべきは一にも、二にも、三にもブロードバンドだ」と提言。金氏は孫氏の提言を受け入れて実行し、韓国はブロードバンド先進国となった。

孫氏は当時のやりとりを文氏に紹介し「韓国がモバイルインターネットで世界1位の国となり、多くの優れたIT(情報技術)企業を輩出したのはうれしい」と語った。

その上で、「AIは人類の歴史上、最大級の革命をもたらす」と重要性を強調した。「若い起業家は情熱とアイデアがあるが資金がない。そのためには『ユニコーン』がうまれるような投資が必要だ」と語った。

文氏は孫氏に対し、韓国でのAI分野への積極投資や専門人材の育成、韓国のベンチャー企業の世界進出の支援を要請した。孫氏は「世界が韓国のAIに投資するよう支援する」と応じる一方、「韓国も世界首位の企業に投資すべきだ。それが韓国がAIで一等国になる最も早い道だ」と政府の強いリーダーシップの必要性を強調した。

大統領府によると、対談は孫氏からの申し入れで実現した。文氏が孫氏と対談するのは、大統領候補だった2012年、東京のソフトバンク本社を訪問して以来だ。

日韓関係は元徴用工訴訟をめぐり悪化の一途をたどっている。1日には日本政府が韓国向けの輸出管理を厳格化すると発表。緊張はさらに高まっている。ただ、大統領府によると会談では日韓関係については言及しなかったという。
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