【ラスベガス=中西豊紀】米アマゾン・ドット・コムは5日、ドローン(小型無人機)を使った配送を数カ月以内に始めると発表した。注文から30分以内に発注者の自宅の庭などに自動運転で飛ぶドローンが商品を届ける。迅速な宅配はネット小売りの大きな課題だが、アマゾンは「空」をも駆使して効率を高める狙い。物流の常識を変える可能性がある。

4日から7日までラスベガスで開催中のアマゾンのAIやロボット関連技術に関するイベント(リ・マーズ)で発表した。

ドローンはヘリコプターと円筒型の翼を持つ飛行機を組みあわせたようなデザインで、上下の浮き沈みができるほか、水平移動もできる。15マイル(約24キロメートル)以内の距離を飛行可能で、5ポンド(約2キログラム)以下の商品を運ぶ設計になっているという。

配送開始の具体的な時期や場所については言及しなかった。記者団の取材に応じたアマゾンで小売事業を統括するジェフ・ウィルケ副社長は「複数の規制当局や政府と協議をしている。安全性を最優先にサービスを進めていく」と述べた。同社は英国でドローン配送の実験を進めている。

ドローンは人工知能(AI)による画像認識を駆使した自動運転で飛ぶ。ウィルケ副社長は「我々の目的は(実験ではなく)商用化だ」と明言。ドローンは衝突や墜落などを想定した安全に配慮した設計になっていると強調した。

着陸にはあらかじめ設定された専用の「的」を狙って下りていくが、その的の一定周囲の半径に人が居る場合は着陸しない。この日はデモ動画を流し、ハンググライダーや電線を避ける能力も備えているとした。

ネット小売りでは配送センターから家までの「ラストワンマイル」と呼ばれる配達が課題となっている。米国は宅配事業者のサービス効率が悪いことで知られているが、アマゾンはこれにAIと空路の活用で対応しようとしている。

既存のアイデアを超えた技術の配送への応用は、日本も含めた物流業界のビジネスモデルに影響を与えそうだ。

アマゾンに対しては米議会や司法省が「独占」にあたるかを念頭に調査に乗り出すとされている。同社が巨大すぎて分割が必要かとの質問にウィルケ副社長は「ノー」と答えた。
2019/6/6 4:52
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45750120W9A600C1000000/