大阪・ミナミのホストクラブで2012年、ホストの男性(当時21)が一気飲みをして急性アルコール中毒となり死亡したのは接客業務が原因として、両親が労災認定を求めた訴訟の判決が29日、大阪地裁であった。内藤裕之裁判長は「飲酒は業務の一環」として国の労災不支給決定を取り消した。

代理人弁護士によると、飲酒を伴うサービス業での急性アルコール中毒を労災と認める司法判断は初めてとみられる。

判決理由で内藤裁判長は、先輩ホストからの飲酒の強要を拒絶することは極めて困難な状況だったと指摘。飲酒は売り上げを伸ばすための行為で、急性アルコール中毒は「ホスト業務に伴う危険が現実化した」と判断した。

判決などによると、亡くなったのは通信制高校に通っていた田中裕也さん。12年4月ごろから大阪市中央区の店で勤務し、8月1日の早朝、先輩ホストから強要され、客席を盛り上げようと、焼酎やテキーラを一気飲みした。酔いつぶれ、泡を吹いているのを他の従業員が発見。病院に救急搬送されたが、急性アルコール中毒で死亡した。

両親は13年6月、大阪中央労働基準監督署に労災申請したが、同年11月に不支給とされた。

この問題を巡っては、両親が経営会社側に損害賠償を求めた訴訟も起こし、今年2月の大阪地裁判決は先輩ホストについての使用者責任を認め、約7300万円の支払いを命令。また16年に当時の店の責任者ら2人が業務上過失致死の疑いで大阪府警に書類送検されたが、いずれも不起訴となり、両親は検察審査会への不服申し立てを検討している。〔共同〕
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