【ジッダ(サウジアラビア西部)=飛田雅則】石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国は17日と19日、サウジアラビアの西部ジッダで今後の産油量について協議する。米国がイラン産原油の全面禁輸に踏み切り供給が不足するとの観測が出ており、主要産油国は現在実施している減産の幅を縮小することを軸に調整するもようだ。原油高を嫌うトランプ米大統領も増産圧力をかけている。

OPECと非加盟のロシアなどで構成する「OPECプラス」が開く閣僚級の会合には、開催国のサウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相やロシアのノワク・エネルギー相らが出席する。減産対象ではないイランは参加しない見込みだ。

オマーンのルムヒ石油・ガス相は「今回の会合では産油量を増やすべきかどうかを議論する」と語った。原油市場では供給が減るとの観測が出ているためだ。米国が5月に一部の国・地域に認めてきたイラン原油の輸入を禁じた。さらに同じく米国が制裁をかけるベネズエラ、政情不安のリビアやナイジェリアなどの生産も不安定となっている。

サウジのファリハ氏は4月下旬「市場に原油は適切に供給されている」としつつも、「顧客が相応な供給を受けられるように保証する」と産油量を増やすことに含みを持たせた。サウジなどは割り当てられた目標値を超えて減産をしており、産油国の間ではその数値まで産油量を増やす方向で調整するとの見方が浮上している。サウジは4月時点で目標値を日量50万バレルも超える減産をしている。

OPECと減産協力を続けるロシアは、国内の石油会社から収入確保のため増産したいという意向が出ている。ロシアは減産の継続に否定的との情報も出ている。

年初から産油国の減産が原油価格を押し上げてきた。足元では供給減の観測からロンドン市場の北海ブレント原油先物が1バレル72ドル前後、ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は62ドル前後と、それぞれ年初比で30%強高い水準で推移する。

トランプ大統領は4月下旬に記者団を前に「OPECと連絡をとった。価格を下げるべきだ」と増産圧力をかける。20年の大統領選挙で再選を狙う同氏にとって、有権者に不人気なガソリン高を招く原油価格の上昇を避けたいためだ。

OPECを主導するサウジは、トランプ氏の意向を無視することが難しい面がある。サウジは米国とともに、敵対するイランと共闘しているためだ。サウジの石油施設が14日にイランを後ろ盾とするイエメンの武装勢力に無人機で攻撃されただけに、対イランで米国との共同歩調が一段と重要になっており、トランプ氏に一定の配慮をする必要がある。

ただ、OPECプラスは18年に米イラン制裁再開にあわせて減産を緩めたが、想定ほど需給は逼迫せず、価格の下落を招いた経緯がある。さらにイランは輸出が減る分を、サウジが増産して穴埋めをする構図に反発するなど、減産幅の縮小にはまだ異論が残る。最終的に6月下旬にウィーンで開く会合で正式に決める見通しだが、産油国の駆け引き次第で原油価格が不安定になる可能性がある。

2019/5/17 16:42
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44933410X10C19A5FF8000/