内閣府は13日、3月の景気動向指数の速報値を発表する。中国経済が減速した影響などで生産の動きが弱く、景気の現状を示す一致指数は前月より下がる見通しだ。その場合、指数に基づく機械的な景気判断は6年2カ月ぶりに「悪化」となる。今後は政府が5月中にまとめる月例経済報告で、「回復」としてきた公式の景気認識を修正するかどうかが焦点だ。

景気指数による基調判断の種類と定義
https://www.nikkei.com/content/pic/20190513/96958A9F889DE6E6E4E1E6E6E0E2E3E2E2E7E0E2E3EBE2E2E2E2E2E3-DSXMZO4463439010052019EE8002-PB1-3.jpg

一致指数(CI、2015年=100)は生産や雇用などにかかわる9項目の指標から算出する。内閣府はこの指数の動きを所定の基準にあてはめ、「改善」「足踏み」「悪化」などの基調判断を機械的に示す。

日本の景気は12年12月から回復局面が続いている。14年4月の消費増税などで一時的に冷え込んだことはあったが、一致指数に基づく景気判断は16年10月から18年8月まで23カ月続けて「改善」だった。

ただ、昨年後半からは一致指数の動きに陰りが見える。米中の貿易摩擦も影響し、中国向けの輸出が弱含んだためだ。このため一致指数による判断は18年9〜12月は「足踏み」となり、19年1〜2月は過去数カ月の間に景気回復が終わったことを示唆する「下方への局面変化」となっていた。

3月分の指数に基づく機械的な判断は、大きく分けて5段階のうち最も下の「悪化」となる可能性が濃厚だ。景気後退の可能性が高いことを示す。景気回復と後退の判断は専門家が事後的に時間をかけて判断するが、足元では景気後退をうかがわせる内容となる。

ただ、動向指数は景気の現状を把握するための指標の一つでもある。政府は個人消費や設備投資、日銀短観に基づく企業の業況判断や物価の動きなどから総合的に判断して景気認識を示す。この認識を最終的には月例経済報告で「総括判断」としてまとめ、関係閣僚会議を開いて決定する。

https://www.nikkei.com/content/pic/20190513/96958A9F889DE6E6E4E1E6E6E0E2E3E2E2E7E0E2E3EBE2E2E2E2E2E3-DSXMZO4470420013052019I00001-PN1-2.jpg
内閣府が景気動向指数を発表する

前回、指数による機械的な判断が「悪化」だったのは12年10月〜13年1月。その直前の12年9月は「下方への局面変化」だった。当時の月例経済報告をひもとくと、9月は「回復の動きに足踏みがみられる」。それが10月は「回復」の文言が消えて「弱めの動き」になった。景気循環の事後判定では12年4〜11月が景気後退期とされた。

その後、12年12月からの回復局面が今まで続いているのか、あるいは既に後退局面入りしているのか、足元の景気が微妙な状況にあることは間違いない。米中の貿易摩擦も日本経済の重荷としてのしかかる。

今年は参院選や消費増税を控えるだけに、政府の景気認識は重要な意味を持つ。5月下旬の月例経済報告に向けて、関係各省の調整が本格化する。

2019/5/13 6:30
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44634420Q9A510C1000001/