ヤフーは25日、10月1日付で持ち株会社制に移行し、社名を「Zホールディングス(HD)」に変更すると発表した。持ち株会社傘下で広告や検索などのインターネット関連事業と、金融事業を別々の会社が担う体制にする。スマートフォン(スマホ)決済を成長の柱に位置付けて投資を続けるなか、分社化で金融事業のスピードを高める。

「オンラインとオフラインを融合した情報化社会の実現に向け(ヤフーの頭文字の)YからZへとモードを切り替えていく」。25日、東京都内の本社で記者会見した川辺健太郎社長は社名変更の理由をこう説明した。

持ち株会社化は6月18日に開催予定の株主総会で決定する。電子商取引(EC)やポータルサイトなどネット事業を運営する事業会社のヤフーと、ジャパンネット銀行などを統括する金融持ち株会社を設立。10月1日付で持ち株会社のZHDの下に並ぶ形になる。東証1部に上場する企業はZHDとなる。川辺社長は「金融事業に力を入れていくなかで、ネットと金融それぞれでガバナンス(企業統治)を整える」と狙いを説明した。

川辺社長はヤフーの経営環境について「米IT大手や新興企業との戦いで、事業環境は引き続き厳しい」と語った。他社との違いを出すために注力するのが、ソフトバンクと共同で運営するスマホ決済「ペイペイ」だ。ペイペイは当初は新ヤフー傘下になるが、軌道に乗れば金融持ち株会社に移す。会見ではペイペイで収集される決済データを使った後払い決済や小口融資サービスなどの構想を示した。

同日発表した2019年3月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前の期に比べて4割減の786億円だった。大規模な還元キャンペーンを行い、183億円の持ち分法投資損失を計上したことが利益を押し下げた。決済による利益の確保よりも利用者の拡大を優先した形で、ペイペイの累計の登録者数は666万人に達した。

川辺社長は「新たなサービス開発に向け、土台となる決済事業を拡大していくための投資を継続する。今後4年は投資のフェーズだ」と強調する。20年3月期の純利益は微増〜8%増の790億円〜850億円と、18年3月期の6割の水準にとどまる見通しだ。10年後の成長をにらんだ基盤作りが続く。
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