米フェイスブックが中国に子会社を設立したことが24日、明らかになった。ロイター通信や中国メディアなどが一斉に報じた。フェイスブックは中国当局が求める自主検閲などを受け入れていないとされるため、中国で利用できない。子会社設立を機に中国市場へ本格進出するのではないかとの観測も浮上している。

フェイスブックの広報担当者は24日、日本経済新聞の問い合わせに対し「我々は中国の開発者やスタートアップ企業などをサポートするためイノベーションハブを設けることに関心を持っている」と指摘、中国事業に力を入れる姿勢を示した。

中国の工商当局のサイトに、中国語でフェイスブックを意味する「臉書」を使った「臉書科技(杭州)有限公司」が登録された。資本金は3000万ドル(約33億円)で、フェイスブックの香港法人が全額出資したと記載されている。杭州はアリババ集団などインターネット大手の本拠地が多い地域として知られる。

中国メディアによると、事業範囲はネット技術の開発やサービス、投資、経済情報の取り扱いなどを含む。代表者は中国の投資会社や中国パソコン大手レノボ・グループの幹部などを経て、2017年にフェイスブックに加わったとされる。

フェイスブックは09年から中国で利用できないままだ。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はこれまでに中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席らと会談。中国市場への参入機会をうかがってきたとされる。だが、自主検閲や蓄積データの扱いを巡って中国側との合意は難しいとみられてきた。

今回の新会社設立について、中国ではフェイスブックを再び利用できるようになると期待する声が出ている。しかし、中国で検索サービスを利用できない米グーグルも、中国の子会社を通じて研究開発などを進めている。このため「新会社設立が中国での利用再開につながるかどうかは不透明だ」という見方もある。

習氏の最高指導部はネットの言論統制を強めている。フェイスブックやグーグルのほか、トランプ米大統領が発信に使う米ツイッターも中国では利用できない。トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争のなかで、習最高指導部は電気自動車(EV)大手、米テスラの中国での全額出資子会社の設立を認めるなど、米IT(情報技術)企業の取り込みを狙っているとの見方も出ている。

[北京=多部田俊輔]

2018年7月24日 22:59 日本経済新聞
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