米小売り最大手ウォルマートは17日、米マイクロソフト(MS)と5年間の戦略的パートナーシップを結ぶと発表した。MSのクラウドサービスを活用し、小売りの現場で人工知能(AI)や機械学習の取り入れを加速させる。アマゾン・ドット・コムの強力なライバル2社がタッグを組み、アマゾンを追いかける構図が改めて鮮明になった。

 ウォルマートのダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は「ウォルマートのテクノロジーに対する関わりは消費者にとってとても便利な買い物方法を作りだし、従業員が最高の仕事ができるように力を与えてくれるものだ」とコメント。「マイクロソフトは我々の開発能力をさらに深く迅速なものにしてくれると信じている」と今回の提携に期待を寄せた。

 マイクロソフトは買い物時にレジでの支払いを不要にする技術の開発に取り組んでいるとされる。こうした最新の技術がウォルマートの全米4700の店舗に導入される可能性がある。無人レジ技術はアマゾンが先行しており、今年1月にはレジなしコンビニ「アマゾン・ゴー」を本社があるシアトルで開業したばかりだ。

 ウォルマートは今年5月、ニューヨーク中心部の居住者を対象にスマホのテキストメールの会話で商品を注文できるサービスの開始を発表した。この新サービスではAIが回答する「ボット」技術が肝となる。現在は限定的なサービス展開となっているが、MSとの戦略的提携により利便性の向上が期待される。ウォルマートの通販サイトでもMSのクラウドサービスを活用し、今より使い勝手を良くする。

 ウォルマートはネット通販の王者、アマゾンの拡大に対抗するため、戦略的な買収や提携をこれまでも進めてきた。2016年には30億ドルを投じて、新興のネット通販「ジェット・ドット・コム」を買収。その後も小・中規模のネット通販や物流系のIT企業の買収を次々と打ち出してきた。

 今年3月には今後2年かけて全米500店舗に米物流大手フェデックスの営業所を開設すると発表した。「打倒アマゾン」のため、フェデックスやMSなど異業種との協業にも積極的に取り組む考えだ。

 今回の戦略的提携は、アマゾンが毎年7月に実施する有料会員向け特売イベント「プライムデー」の真っ最中に発表された。これもアマゾンに対する強い対抗意識の表れといえそうだ。
2018/7/17 23:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33086220X10C18A7TJ2000/