トランプ米政権は10日、中国の知的財産侵害に対する制裁関税の追加措置案を公表した。衣料品や食料品など2千億ドル(約22兆円)に相当する6031品目に10%の追加関税を課す。発動は9月以降になる見通し。7月6日に課した関税に対して中国が報復措置に動いたため、関税の規模を積み増して対抗する。米国が強硬姿勢を改めて示したことで中国との対立が一段と激しくなりそうだ。

米通商代表部(USTR)がまとめた品目リストの原案は衣類やかばん、スポーツ用品や家具といった日用品のほか、魚などの水産品、野菜や果物といった食料品を盛り込んだ。6日に発動した対象品目に比べて一般消費者向け製品が目立つのが特徴だ。携帯電話やパソコンは含めていない。

USTRは8月末まで公聴会を開くなどして、企業をはじめ一般からの意見を募集した上で最終リストを確定する。

米政権は既に500億ドル分の中国製品に25%の関税を課す方針を決定。このうち産業用ロボットや電子部品など818品目、340億ドル分を7月6日発動した。中国は同日、即座に大豆や自動車など同額分の米国からの輸入品に報復関税を課した。米国は残り160億ドル分について、7月末までに意見募集を終えた後で発動するが、トランプ大統領は月内への前倒しも示唆している。

トランプ氏は6月18日、中国が報復に動いた場合は追加措置を打ち出すと表明。2千億ドル分の対象品目を選ぶようUSTRに指示していた。米政権は今回原案を公表することで追加措置が単なる「脅し」ではないことを明確に示し、中国側に譲歩を促す狙いがあるとみられる。

USTRのライトハイザー代表は10日の声明で中国による報復に関して「国際法上の正当な根拠がない」と批判した。米国の対中輸出額は約1300億ドルと中国からの輸入額より小さいため、同規模の関税をかけ合っても中国側の措置の方が対象となる割合が大きくなると指摘し、追加措置の必要性を強調した。

ただ、米国が追加措置に踏み切れば、中国が新たな報復に動く可能性が大きい。その場合、米国の制裁対象額は計2500億ドルと中国の米国からの輸入総額を超えていることから、中国は追加関税以外の報復も探ることもありうる。

米国の関税は追加措置を含めれば2017年の中国からの輸入(約5056億ドル)の半分を対象にする形になり、米国経済への副作用も大きくなる。トランプ氏はさらに3千億ドル分の追加措置にも言及。合計すれば5千億ドルを超え、中国からの輸入品のほぼ全体が対象になる。

2018/7/11 10:53 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32854440R10C18A7MM0000/