創業から5年、フリーマーケットアプリのメルカリが東京証券取引所マザーズに6月19日上場した。調達資金を米国に投じ、世界で戦えるIT企業に飛躍する夢に挑む。先行企業の多くが苦戦した米国に地歩を築けるのか。スマートフォンを使った中古品の個人間取引という新たな地平を日本で切り開いた「売るアプリ」の底力が試される。

 ITの本場、米西部シリコンバレー。上場を間近に控えた6月中旬、約80人が働く現地法人「米国メルカリ」のオフィスは活気づいていた。事業の成長を見越して5月にサンフランシスコから移転し、200人を収容できる規模に拡張した。陣頭指揮に当たるのは、昨年6月に米会員制交流サイト(SNS)フェイスブックの副社長(事業開発担当)から転じた「実力経営者」ジョン・ラーゲリン最高経営責任者(CEO)だ。

 米国では中古品を倉庫で売るガレージセールが文化として根付く。ラーゲリン氏は個人向けの貸倉庫がコーヒーチェーン「スターバックス」の店舗より多いと指摘。メルカリが手掛ける中古品売買の仲介サービスに対するニーズは大きいとし「正しくやれば必ず成功する」と自信を見せた。

 2013年に東京で創業したメルカリは翌14年に米国法人を設立。創業者の山田進太郎会長は「多様な人種や文化を持つ米国で成功できれば世界に通用する」というのが持論で、早くから米国市場を重要視してきた。

 ただ、日本のITベンチャーにとって米国攻略は至難の業だ。楽天は現地企業を買収したが存在感を示せず、LINE(ライン)もシェアを伸ばせず主力市場がアジア内にとどまっている。現時点ではメルカリもその例に漏れず、年3000億円を超える利用者の売買総額のうち米国分は1割以下と伸び悩んでいる。

 課題は「知名度の低さ」(ラーゲリン氏)だ。対策として、日本版の赤いロゴマークを米国版では青いマークに刷新。「The Selling App(売るアプリ)」というメッセージを前面に出し、企業から一方的に商品を買う通販とは違う双方向性を強調するブランド改革を進めている。今後は上場で得た資金を活用し、広告や配送、アプリ開発を抜本的にてこ入れする方針だ。(米西部シリコンバレー 共同)
2018.6.30 06:06
https://www.sankeibiz.jp/business/news/180630/bsj1806300500003-n1.htm