公正取引委員会は28日、大手携帯電話会社によるスマートフォン(スマホ)の販売・契約慣行について「独占禁止法上、問題の恐れがある」とする報告書を公表した。特に「4年しばり」と呼ばれる契約方法や、端末と通信のセット販売などは「問題となる恐れが一層高い」と指摘。「利用者を不当に囲い込む行為には独禁法を厳正に執行していく」と警告した。

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手携帯3社は同日、「内容を確認して今後の対応を検討したい」などとコメントした。

 公取委は2016年8月にもスマホに関する報告書を出している。前回の報告でも携帯大手に是正を求めたが、対応が十分ではないほか、独禁法上の問題となりうる新たな販売・契約方法も出てきたため再び調査した。

 一部の携帯大手は前回の報告を受け、スマホ端末を4年間の分割払いで購入した契約者を対象に、2年後に機種変更して同じ料金プランに再加入すれば残金がゼロになる「4年しばり」と呼ばれる契約方法を始めた。

 これについて公取委は「消費者の契約変更を断念させることで選択権を事実上奪う」と指摘。競争相手を市場から締め出す「私的独占」や他の携帯会社への乗り換えを妨げる「取引妨害」など独禁法が禁じた行為にあたる可能性があるとした。

 2年間の通信契約を条件に月々の通信料金を割り引く「2年しばり」は、前回の報告書でも問題点を指摘した。総務省の指導もあり、携帯大手は契約開始から2年後以降は解約料なしで解約できるプランを導入するなどの是正措置をとった。ただ新プランは2年しばりのプランと比べて月額の通信料金が高く、公取委は「消費者の実質的な選択肢として機能していない」としている。

 通信契約と引き換えに端末料金を割り引く「セット販売」についても引き続き指摘した。事実上、携帯大手しかできない販売方法であることを問題視。格安スマホ会社の事業の妨げとなり、私的独占につながる恐れがあるとの見解を示した。

 通信と端末のセット販売や2年しばりなどは、携帯各社が顧客流出を防ぐために当たり前のように実施している施策だ。

 「公取委が示した内容を厳粛に受け止めている」(携帯大手の関係者)との受け止めがある一方、業界内からは「2年たった時点で契約を解消する選択肢もあり、実態はいわれるほど4年しばりではない」との声も漏れる。

 報告書は自社で販売したスマホを他の通信会社で使えなくする「SIMロック」のあり方にも再び言及した。携帯大手は一定の条件のもとで解除に応じる措置などをとったが、販売代理店で解除すると手数料を支払う必要があるほか、中古端末の解除に応じていないことが「乗り換えの妨げになっている」とした。

 公取委は指摘した行為について「組み合わさると競争者を排除する効果が増幅され、(独禁法上)問題となる恐れが一層高まる」と強調。前回よりも強い表現で各社に改善を求めた。

 格安スマホ会社が携帯大手に支払う接続料も初めて取り上げ、「算定根拠が不透明で競争阻害の可能性がある」と原価など詳細の公表を求めた。総務省は接続料について透明性が重要との問題意識は共有しており、「必要に応じて検証や見直しを続けていく」(料金サービス課)としている。

 公取委のこのタイミングで報告書を出したのは、例年秋に発売するスマホの新機種を意識したとみられる。携帯大手は秋の商戦を前に重い宿題を課せられた形になる。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32361370Y8A620C1EA2000/