先進国で最悪の水準にある国の財政の立て直しに向けた目標が、また5年先送りされました。2度にわたって先送りされた財政健全化の目標。今度は本当に実現できるのでしょうか。3人のエコノミストの見方を交えて読み解きます。(経済部記者 篠崎夏樹)
新しい目標とは

Q国の借金が多いというのは知っているけれど、目標って一体どういうものですか?

A国の借金を減らし、財政を立て直していくために、国は「基礎的財政収支」という指標を重視しています。

これは、教育や医療などの政策に必要なお金を、借金に頼らずに、税金などの収入だけでどれだけまかなえているかを示します。家計に例えると、生活費を給料などの収入の範囲内でまかなえているかどうかを表します。

今までは、毎年、借金をしなければ生活できない赤字家計でした。少しずつ赤字を減らして2020年度には収入の範囲内に納める、つまり黒字化する目標でしたが、今回、その目標を5年先延ばしして、2025年度としました。

Qどうして先送りしたのですか?

A来年10月に10%に引き上げる予定の消費税の使いみちを見直したから、というのが政府の説明です。赤字減らしなどにまわす分を、幼児教育の無償化など子育て支援に使うことにしたからです。

とはいっても、ことし3月末の段階で基礎的財政収支の赤字額はおよそ18兆5000億円。消費税の使いみちの変更がなくても、達成は難しいという見方が多かったのも事実です。

国はもともと、2011年度に基礎的財政収支を黒字にする目標を掲げていましたが、リーマンショックの後、2020年度に先送りされていて、今回が2度目の先送りなんです。

今度は達成できる?カギは社会保障改革

Q今度は本当に目標を達成できるのですか?

Aカギになるのは、高齢化で膨らみ続ける年金や医療などの社会保障費です。
https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/still/business_tokushu_2018_0614_img_01.jpg

政府の試算では、年金や医療、それに子育てなどの社会保障給付費は、今年度、121兆円あまりですが、2025年度には15%増えて、140兆円あまりになる見込みです。

ここをどう抑えていくかが大きな課題なのですが、その取り組みが不十分だという指摘もあります。

Qどうして不十分なんですか?

Aどう抑制していくのか、具体策が示されていないからです。社会保障費は、高齢化に従って伸びること自体は避けられませんが、いくらでも伸ばせるわけではありません。今年度までの3年間では、伸びを年間5000億円程度に抑えるという目安が示され、毎年1300億円程度は削減されてきたんです。

しかし今回の計画には、「高齢化による増加分に相当する伸びにおさめる」という表現だけで、具体的な数値を盛り込むことは見送られました。
以下ソース
https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2018_0614.html