インターネット標準の普及促進などの活動を行っている非営利の国際組織Internet Society(ISOC)は、IPv6の普及を目指すイベント「World IPv6 Launch」から丸6年となる2018年6月6日、世界のIPv6導入状況についてまとめたレポートを発表した。サービス事業者の間でIPv6への対応は着実に進みつつあるものの、IPv4を超えるには至っていないという。

IPv6は、インターネット上のあらゆる通信の基盤となるプロトコルで、従来のIPv4に代わる新しいバージョンだ。レポートによると、IPトラフィック全体のうちでIPv6の占める割合が15%を超えている国は世界に24カ国、5%超となると49カ国ある。IPv6は「アーリーアダプター」の段階から「アーリーマジョリティ」の段階に移ったとISOCは説明している。

 IPv6の状況についてISOCが前向きな表現をした理由の1つは、IPv6の利用そのものの拡大にある。米国の4大携帯キャリアや、米Comcast、インドReliance Jioなど、世界的に見て存在感が大きい通信事業者の中には、インターネットトラフィックの半数以上がIPv6となっている事業者もある。Reliance JioのIPv6利用者は推計2億3700万人だ。IPv6専用のネットワークなら、ネットワークの運用が極めてシンプルになり、コストも抑えられる。したがって、利用拡大の傾向が今後も続くと見る根拠はある。

レガシーアプリケーションがIPv6普及の妨げか

 ISOCのレポートは、IPv6の普及に立ちはだかる大きな課題の1つとして、エンタープライズ市場を挙げている。IPv6で動作するかどうかが定かでないレガシーアプリケーションがあるために、引き続きIPv4接続を必要としている企業は多い。しかし一方で、企業には「興味深いビジネスチャンス」もあるとレポートは指摘する。2011年には、米Microsoftが66万6000個のIPv4アドレスを1個当たり11.25ドルという高値で買い取った事例がある。IPv6の導入にいち早くかじを切った企業は、IPv4アドレスの売買市場を利用して、価格が下がる前にIPv4アドレスを売り抜けることができる。レポートでは、IPv4アドレスの価格は2019年には下がり始めるとの見通しを紹介している。

 Webサイト側のIPv6対応は全体として拡大が続いている。米Alexa InternetのWebサイトランキングにおける上位1000サイトのうち、IPv6に対応している割合は28%で、前年比5ポイント増加した。また、上位100万サイトで見ると、IPv6対応は17%で同4ポイント増だった。

 だが、IPv6導入に関する見通しはバラ色とは言い切れない。インターネット全体をIPv6に移行させる方法に関連してITU(国際電気通信連合)が出したドラフト案は、IPv4依存を減らすための策が十分でないとして厳しい批判を受けており、有意義な変革として実を結びそうにはない。
http://tech.nikkeibp.co.jp/it/atcl/idg/14/481542/060800513/