0001みつを ★
2018/06/08(金) 02:08:29.70ID:CAP_USER2018年6月6日 / 09:39 / 11時間前更新
コラム:最悪のタイミングでやってきた「トランプ保護主義」=熊野英生氏
熊野英生 第一生命経済研究所 首席エコノミスト
[東京 6日] - 最近まで、イタリアの政治不安が、ユーロ安円高、そして株安へと悪い流れをつくってきた。筆者は、欧州の知識が乏しいので、この政治不安がどのくらい実体経済にダメージを及ぼすかはよく分からない。しかし、影響を及ぼされる側の実体経済が少しずつ変化していることは理解できる。
マーケットに対する悪い兆候としては、イタリアの政治不安もさることながら、そうしたショックを受ける側のファンダメンタルズ自体にも不安が表われてきている点を看過してはいけないと思う。
各国の購買担当者景気指数(PMI)は、しばらく続いてきた上昇が頭打ちになって、少し踊り場の様相が表れてきた。日本の指標では、鉱工業生産、景気ウォッチャーに頭打ちの感が色濃い。
最近では、オランダ経済政策分析局(CPB)発表の世界貿易量が2018年3月に前年比プラス2.1%に急落している。このデータは2月までは4―5%の高い伸びを示していただけにショッキングである。中国の春節によって一時的に鈍化したことを割り引く必要もある。
こうした変化は、政治不安などのショックに対して耐久力を保持してきた実体経済が今、以前よりも打たれ弱くなっていることを示している。
<ポピュリズムと景気の逆相関>
過去数年、先進国ではポピュリズムが勢いを増している。ポピュリズムを経済面から捉えると、減税・財政拡張、反緊縮と特徴付けられる。経済状況が困窮すると大衆はポピュリズム政党に先導される。欧州の極右勢力にも同じような傾向がある。
逆に元来、経済が好調なときは、ポピュリズムの発言力は低下する。財政は、そもそも経済が好調になると健全化して、経済不振のときに赤字幅を拡大させる。理屈から言えば、経済好調に支えられて、ポピュリズムは相対的に抑え込まれていたはずだった。
ところが、リーマン・ショックの爪痕が格差を広げたこともあるのだろう。ポピュリズムは根強く支持を得ている。ここにきて、景気が悪化していくならば、振り子は財政悪化を助長していく方向へと振れる。
さらに、中銀の緩和解除は遅れて、カネ余りが常態化することになる。これは、次のバブルの芽をつくることにもなろう。
<自縄自縛のトランプ政権>
景気悪化、ポピュリズム、放漫財政、金融緩和延長という悪循環に歯止めをかけるには、まずは本格的な景気悪化に各国が陥らないことが肝要だ。自由貿易は、競争力の高い企業の成長を助長して、他国の成長力を取り込んでいく側面がある。景気悪化のときほど、成長の伸びしろを広げていくことが有利になる。
しかし、このメカニズムも、トランプ大統領の保護主義的政策によって作用しにくくなっている。3月23日に鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を発動した。次いで、中国への関税導入を発表し、さらに輸入自動車への関税適用を検討している。
トランプ大統領の政策をポピュリズムと言ってしまえばそれまでだが、自縄自縛の悪い連鎖は景気を巻き込んでいき、悪化させるだろう。何とも最悪のタイミングで、トランプ大統領が保護主義の姿勢をあらわにしたと思う。
<悪い流れを止める手立ては>
株価が政治不安によって下落するのは、そうした不安が為替などを通じて、企業業績にもいずれ響いてくるという連想からだ。今のところ、企業収益は堅調であり、マクロ景気の踊り場的な変化は表れていない。
このことは、まだ悪影響の初期段階だから、政策面での悪い流れを止めるチャンスがあるということだろう。米国の輸入自動車への関税適用問題については、安倍晋三首相の粘り強い交渉力が期待される。
円高圧力に対しては、米朝首脳会談が12日に開催されて、それが地政学リスクの後退につながることが望まれる。
自由貿易に関しては、2019年中に、米国を除く11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)と日欧経済連携協定(EPA)が発効しそうだという前向きのイベントもある。悪い方向への連鎖に歯止めがかかるかどうか注目される。