水産庁は24日、養殖業への企業参入を加速し、水産業を成長産業とする改革案を発表した。地元の漁業協同組合に優先的に付与してきた漁業権の優先順位を廃止し、有効活用されていない漁場を洗い出して企業向けに開放する。政府は6月にまとめる「骨太の方針」に盛り込む方針だ。

 改革案は漁業権の免許について、地元漁協を最優先すると定める現行の漁業法などの優先順位の規定を廃止する。代わりに「水域を適切かつ有効に活用している場合は、その継続利用を優先する」との基本方針を法改正で明記する。漁場を有効利用していない場合は漁業権の取り消しも行う。漁場の利用状況を理由に漁業権の取り消しを認めるのは、今回が初めてとなる。

 日本の漁獲量は1984年の1282万トンをピークに、2015年には469万トンまで減少。漁業者数も20年間で4割以上減った。特に沿岸漁業では平均所得が200万円台と低迷し、後継者不足が問題になっている。世界では急速に養殖の生産が拡大しており、20年間で3・4倍に増える一方、日本では94年をピークに減少している。

 養殖には都道府県知事が付与する漁業権が必要だ。小規模漁業者でつくる漁協に最優先で漁業権が割り振られてきたため、技術革新や規模拡大が進まないとの指摘があった。漁協優先の漁業権のあり方が見直されれば、企業が漁業権を取得しやすくなり、長期的な経営計画を立てられるようになる。水産庁は漁場の利用状況について初の実態調査も実施し、企業の参入余地を探る。

 改革案は漁協の情報公開も規定した。「漁業権行使料」「協力金」などの名目で組合員から集めている徴収金が、新規参入を目指す企業には高額に設定される可能性があるなど「不透明」との批判があったためだ。また、組合員の貯金など金融事業を扱う信漁連などには、公認会計士の監査を導入。漁協役員には販売のプロを入れるよう関連法を改正して、販売力強化を目指す。

 一方、さまざまな魚種が減少していることから、資源管理を強化する。これまで、ごく一部に限られていた漁獲枠の数量管理の対象魚種を拡大し、漁業者には水揚げ後、速やかな漁獲量の報告を義務づける。罰則や割り当て削減などのペナルティーも導入する。

 漁業権の優先順位に関する漁業法の大幅改正は62年以来となり、斎藤健農相は「戦後以来の大きな改革」と位置づける。ただ、これまで一部漁業権を事実上「独占」してきた漁協などの反発も予想され、成長産業化の実効性を上げられるかどうかは不透明だ。
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