日本経済新聞 2018/5/21付
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO3074378020052018PE8000/

 借金にまみれた国の財政を立て直すには成長戦略、歳出改革、消費税増税の3つを間断なく推し進めねば
ならない。このなかで中長期の歳出改革の要になるのが医療・介護費の膨張抑制だ。

 具体策のひとつとして、これから75歳の後期高齢者になる人の医療費の窓口負担は原則20%に
するよう求めたい。その核とすべきは戦後ベビーブーム期に生まれた団塊の世代である。

 介護保険の自己負担も65歳以上の高齢者は原則20%にするのが望ましいだろう。保険料と税の主たる
出し手である現役世代の負担はますます重くなる。それを高齢者に意識してもらい、医療と介護の効率化に
つなげる必要がある。

 医療費の窓口負担は現在、小学校入学前の子供20%、70〜74歳20%、後期高齢者10%、現役世代など
それ以外は30%が基本。子供には地方自治体が独自に補助し、負担を減免している。

 年齢を基準にして高齢者の負担を和らげるやり方は、人口構成が若い高度成長期の発想といえる。
私たちは個人の資力、つまり収入・資産に応じて負担率を決めるべきだと主張してきた。

 今も現役世代並みの所得があると認定された高齢者は30%を負担している。だが後期高齢者の多くは、
相当の収入があっても現役並みと見なされず10%負担ですんでいる。30%負担の人は後期高齢者の
6〜7%にとどまる。

 マイナンバーの導入に伴い、金融資産を含め個人の資力を把握しやすくなった。無年金や極端な
低年金者に配慮しつつ、全世代を通じて30%負担を原則とすべきだ。

 そこに至るまでのつなぎの策として不可欠なのが、後期高齢者の原則20%負担である。すでに後期高齢者に
なった人すべてを対象にするのが望ましいが、政治的には困難を伴うかもしれない。

 折衷案として、これから75歳を迎える人から順次、対象にするやり方を提案したい。これだと74歳までのときと
負担率が変わらないので抵抗感は小さかろう。また現役並みと認定する基準の緩和が必要だ。団塊の世代に
逃げ得を許さないことが大切である。

 介護の自己負担は現在、原則10%、一部の高所得者が20%だ。介護費の膨張ペースは医療費を優に上回る。
負担率を原則20%・低所得者10%に転換させるときであろう。要支援者や要介護度が低い人は、
原則30%にしてもよかろう。