インターネットで目当ての商品を検索するとき、購入者の評価が書かれたブログやランキングサイトを参考にした経験はないだろうか。こうしたサイトの多くは「アフィリエイト」と呼ばれる広告だ。「手軽に稼げるビジネス」として、サイト作成者(アフィリエイター)は国内に500万人と推計される。一方、紛らわしい表現で消費者を誤認させる不正も相次ぐ。

アフィリエイトは本来、「提携する」という意味だ。一方でIT用語としては、利用者が商品やサービスの広告記事を経由して購入・契約した場合、企業がアフィリエイターに成功報酬を支払う仕組みを指す。

ネット上では利用者がどのサイトを経由したかが記録され、履歴をたどれるため、どのブログやサイトが商品の売り上げに貢献したかを判断できるようになった。広告を出す企業とアフィリエイターの橋渡しをする仲介会社(ASP)の存在もあり、業界として発展。業界団体「日本アフィリエイト協議会」(神奈川県藤沢市)によると、国内のASPは100社近くに上る。

市場も右肩上がりで、調査会社の「矢野経済研究所」によると2016年度の国内アフィリエイト市場の規模は前年度比17.2%増の約2005億円と推計。5年後は約4058億円まで成長すると見込まれている。背景には、スマートフォンの普及で企業がネットを使った集客に力を入れるようになった点がある。他のネット広告より費用対効果が高いと注目されている。

アフィリエイターも急増。同協議会によると400万〜500万人と推計される。元手がかからず、自宅で気軽に始められるため、高齢者や身体障害がある人、子供を持つ主婦でも可能。「働き方改革」の機運の高まりを受け、副収入を目的に始める会社員も多い。専業のアフィリエイターもいる。

一方で、閲覧数を稼ぐため「一番売れている」「人気ランキング1位」など、根拠があいまいな表現で消費者に誤解を与えたり、本当は宣伝なのに、それと悟られないよう特定の商品やサービスを肯定的にアピールしたりするといった不正が多く、問題視されている。

■ランキングサイト多数 信頼性に疑問

「通販人気ランキング」と題されたサイトには、有名セレクトショップが扱う洋服や雑貨の画像が並んでいた。「1位ジャージージャケット」「2位トートバッグ」。商品名をクリックすると、通販サイトへ移動し、すぐに購入できる−。

このサイトは約8年前、アフィリエイターの男性(35)=埼玉県=が作った。閲覧者が通販サイトで商品を購入すると、通販会社側から報酬が振り込まれた。サイトはグーグルなどの検索エンジンで上位に表示されていたため、閲覧者が絶えなかった。

ほかにも、楽天など大手ショッピングサイトからランキング情報を自動で取得するシステムを使い、ファッションや車の部品に関するものなど、500を超えるランキングサイトを半自動的に作成。一時はアフィリエイトの収入だけで月25万円近くに上った。「楽に稼ぐことばかり考えていた」と振り返る。

しかし、放っておいても稼ぎを生み出す「打ち出の小づち」の状態は長く続かなかった。グーグルは、こうしたサイトがあふれた結果、利用者が本当に求める情報を入手できないとして対策を強化。自動生成された独自性のないサイトを検索上位にしないようシステムを変更した。

男性のサイトも閲覧者が激減。扱う商品を変え、関連した口コミを大手サイトから自動的に転載するなどの対策を取ったが、効果なし。考えの甘さを痛感させられ、「サイトの大量生産」から手を引いた。

2015年末、自分のサイトに掲載したインターネット回線の利用体験記にアクセスが集中していることに気付いた。「自分の体験を書いたオリジナルの記事こそが、閲覧者の興味を引く」と実感。自身の言葉で、体験を交えて丁寧に記述するアフィリエイトサイトにしたところ、月によっては収入が100万円に届くまでになった。

ネットには現在も多くのランキングサイトが存在するが、男性は信頼性に疑問を投げ掛ける。

過去には、ネット広告の関係者から「ランキングでこの商品を1位にしてくれたら、報酬をアップする」と持ち掛けられたこともあるという。

「このサイトのランキング、変ですよ」。仮想通貨交換業者ランキングを載せたあるサイトを男性が示した。上位には、最近トラブルが大きく報道された交換業者名が表示されていた。
以下ソース
2018.5.21 05:00
https://www.sankeibiz.jp/business/news/180521/bsj1805210500001-n1.htm