現代ビジネス 2018.05.18
(記事元に画像あり)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55661

ふっくらごはんに、パリパリ海苔。今や日本人のソウルフードに成長した「コンビニおにぎり」。だが、
今年はちょっと違う。海苔なし、混ぜごはん、雑穀米――品ぞろえの幅がぐんと広がり、強烈な個性を放つ一品が
登場している。各社の新作おにぎりから、トレンドを探ってみた。


おにぎりの質で売上が左右

コンビニの売り場に並ぶおにぎりは、店舗によって異なるが、だいたい30種類前後。

梅・シャケ・ツナマヨあたりが定番だが、「おにぎりの販売個数は売り場のフードメニューの中で最も多く、
年間22億個にものぼります」(セブン−イレブン担当者)

と話すように、販売歴約40年のおにぎりは誰もが納得するキング・オブ・コンビニ。王者の人気が店全体の
売り上げを左右するといっていいだろう。だから毎年、どのコンビニも全力でおにぎりをブラッシュアップするのだ。

今年は、その集客力に磨きをかけた新たな販売戦略が動き出している。

ファミリーマート(以下ファミマ)では、4月に登場したユニークなおにぎりが話題だ。

その名も「男飯」シリーズ。ごはんの上に豚カルビが載っていたり、丸く握ったガーリックライスの上に
厚切ベーコンとチーズがかかっていたりと、名のとおり、一つで満腹間違いなしのボリューミーな一品。

売り場で大いに目を引くのだが、ふと疑問に思った。今のコンビニは、健康志向の女性やシニア客が増えている。
がっつり系のおにぎりに、勝算はあるのだろうか?

「手巻おむすびも、直巻おむすびも年々品質がアップし、多くのお客様にご好評いただいています。
でも若いお客様の中には、もっと食べ応えのある商品を望まれる方もいらっしゃる。男飯シリーズは
『人気のお弁当をワンハンドで食べているような仕立て』の、おむすびの新しいカタチなんです」
(ファミマ担当者)

なるほど、「ライス」+「豚カルビ」なんて、もはや定食メニューだ。手っ取り早く食事をすませたい人には
ちょうどいい。

「どれも、ターゲットどおりの20〜30代男性によく購入されています。朝よりも昼や夜の時間帯に売れているので、
忙しくてもしっかり食べたいニーズにお応えできているのかなと思います」(ファミマ担当者)

「コンビニおにぎりのヘビーユーザーは中高年」という話を業界内でよく聞くが、男飯シリーズは、
移り気な若者男性客の胃袋もしっかりとつかんだ格好だ。ヘビーなおにぎりファンのすそ野を広げるのに、
一役買っていることは間違いない。

(中略)


「今のお客様はお弁当一つで済ますというよりも、主食におかず、サラダ、デザート等、あれこれお好きなものを
ビュッフェのように選んで“買い合わせる”スタイルを好まれます。そうしたニーズにお応えしたい」

と、経営トップをはじめ、セブンの商品開発者たちは口をそろえる。そこで、「小さい」「少容量」が
キーワードになってくる。

主食のおにぎりが小さいと、「スープも買おう」、「サラダもほしい」、「デサートもつけちゃおうか」、
とつい欲張ってしまうものだ。つまり、「小さな五穀ごはんおむすび」シリーズは、あれこれ食べたい女性たちに
「ついで買い」を促す力も備えている。

実際、筆者も小さなおむすびだけでは飽き足らず、カップ容器に入った総菜やサラダに手を伸ばす機会が増えた。
その分、いつもより100円ほど多めに買ってしまっているが、好きなものばかりを買ったおかげで満足し、
あまり気にならない。ビュッフェ買いは、無意識のうちに客単価アップにつながるようだ。

おいしさ、アイデア企画、サイズ――今回、ざっと挙げただけでも、コンビニおにぎりがいかに多彩に
なってきたかがわかるだろう。たかがコンビニおにぎりとは、もういえない。消費者を引きつける進化系
おにぎりには、商いのヒントがぎゅっと詰まっている。

※価格は税込み