PRESIDENT Online 2018.5.18
http://president.jp/articles/-/25164

 政府の「働き方改革」で手当が廃止され、大幅な減収になるケースが出てきている。日本郵政グループは
一部の正社員の住居手当を廃止する。減収額は年間で最大32万4000円。廃止の理由は正社員・非正社員の格差を
是正する「同一労働同一賃金」だという。だが正社員の待遇を非正社員なみに引き下げることが
許されるのだろうか。企業側が「次」に廃止をもくろむ手当の中身とは――。


(中略)


狙われやすいのは、住宅手当・配偶者手当・家族手当

 基本給やボーナスは、仕事の成果や貢献度の違いで格差を設けることについてある程度合理的な説明が
可能だろう。しかし、諸手当については非正社員にのみ支給しないという合理的説明は極めて難しい。

 実際に正社員に支給し、非正社員に支給していない手当は多い。日経リサーチの調査(「柔軟な働き方等に係る
実態調査(2668社)」2017年3月)によると、正社員に支給している手当(※)は平均6.9種類なのに対し、
非正社員は3.0種類と大きな開きがある。

※主に通勤手当など。所定外賃金(時間外手当、深夜手当など)は除く。

 とくに、住宅手当、配偶者手当、家族(扶養)手当といった仕事の出来・不出来とまったく関係のない
属人手当といわれるものを非正社員に支給しないのは完全にアウトだろう。


(中略)


最悪は、非正社員の処遇そのままで正社員の処遇切り下げ

 日本郵政グループは正社員の処遇を削り、非正社員の処遇向上を図っているのでまだよいほうかもしれない。
もっと恐ろしいのは非正社員の処遇はそのままにして「同一労働同一賃金」というお墨付きを得て、
正社員の給与など処遇の一方的切り下げを行う企業が出てくることだ。

 そもそもパートタイム・有期雇用労働法の趣旨は、差別や不利益な扱いを受けている労働者の待遇を
引き上げることだった。労働者の待遇の引き下げに使われては本末転倒だ。男女差別を禁止する法律を
逆手に取って、男性の処遇を引き下げて男女平等とすることが許されないのと同じことだ。

 正社員の処遇を切り下げて非正社員と同じにするのは明らかな脱法的行為だ。今後そうした企業が
出てこないか。注視したい。


(全文は記事元参照。全4ページ)