米ホワイトハウスで10日、人工知能(AI)問題を議論する官民による会合が開かれ、政府はAI開発への規制を緩和する方針を表明した。AIをめぐってはセキュリティーや雇用などへの懸念が高まっている。半面、中国との開発競争が激化しており、米国は官民挙げてAI技術の成長基盤を強化する。

会合にはグーグルの親会社アルファベットやゴールドマン・サックス、ボーイング、CVSヘルスなど40以上の企業の幹部が出席し、国家による研究開発支援や米国での技術革新に向けた障害除去などが話し合われた。

マイケル・クラチオス大統領副補佐官(科学・技術政策担当)は企業の幹部らに対し、「AI開発に可能な限り最大限の自由度を与える」と表明。さらに、国家科学技術会議(NTSC)の下にAIに関する委員会を新設することを発表した。委員会は連邦政府管轄下の研究開発担当の高官らで構成する。

また、AI普及に伴い懸念される雇用喪失の問題についても言及した。クラチオス氏は「ある程度はAIによる雇用の置き換えは避けられない」と指摘する一方、米政府は科学・技術・工学・数学(STEM)教育への助成金などで「労働環境の変化を緩和し、才能ある人材を求める産業を支援している」と語った。

米国がAIに対する規制緩和の方針を打ち出した背景の一つに、中国との開発競争がある。中国政府はAIを国家の優先事項の一つに据え、AI産業の総生産額を3年で10倍にする目標を掲げている。また、銀行サービスや人混みの中での顔認識、ドローン操縦などの分野で多くの中国企業が機械学習システムを導入している。(ブルームバーグ Ben Brody、Toluse Olorunnipa)
2018.5.12 05:00
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/180512/mcb1805120500007-n1.htm