パナソニックは10日、2019年3月期に連結営業利益(国際会計基準)で前期比12%増の4250億円を見込むと発表した。連続増益となるが、かねて経営目標に掲げてきた4500億円には届かず、稼ぐ力の向上は道半ばといえる。ソニーなどライバルの業績が急拡大するなか、重点事業の成長加速は急務だ。

 同日発表した18年3月期決算は一定の回復を印象付けた。売上高は前の期比9%増の7兆9821億円。会計基準を変えたため単純比較できないが、実質的に4年ぶりの増収を果たした。純利益は58%増の2360億円と、過去最高だった08年3月期(2818億円)以来の高水準だ。車載製品や工場自動化に使う機器などがけん引した。

 この流れは19年3月期も続く半面、営業利益見通しは目標値を下回る。純利益見通しも前期比6%増の2500億円と、目指してきた「2500億円以上」の下限にとどまる見込みだ。想定為替レートを1ドル=105円と、目標の前提(同115円)に比べ円高方向に見直した影響が大きい。

 裏返していえば、経営資源を集中してきた重点事業の収益力が、為替影響を跳ね返すほどは高まっていない証左でもある。たとえば、車載関連と並ぶ注力分野である法人向け事業。担当する社内カンパニー「コネクティッドソリューションズ社」では、航空機向け娯楽システムが大型機の需要減で振るわず、営業利益は2割減る見通しだ。

 業界全体に目を向けると、大手の業績に格差が付いている。ゲーム事業などが好調なソニーは18年3月期の営業利益(米国会計基準)が20年ぶりに過去最高を更新。19年3月期は9%減の6700億円を見込むが、それでもパナソニックの1.6倍に迫る規模だ。

 ライバルを追い上げるためには、車載用電池や法人向け事業といった重点分野のさらなる成長だけでなく、テレビや太陽光発電関連など低採算事業の再建も不可欠だ。3月に創業100周年を迎えたパナソニック。101年目は早くも勝負の1年になる。

2018/5/10 18:11
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30321300Q8A510C1000000/